■付点のリズムを楽譜通りに弾くべきか否か
♬ 全体的に楽譜通り弾くべきではない付点
具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2 月光 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、15-17小節)
ここではメロディに付点リズムが出てきますが、
この付点を楽譜通りピッタリのリズムで弾いてしまうと
鋭すぎると感じるはず。
言葉で言うと音楽的ではありませんが、
「付点の直後の16分音符を、やや長めの音価で弾く」
要するに、こうするべきなのです。
16分音符だけというよりは
「”付点8分音符と16分音符の1セット全体” のテンポが微妙に広がっている」
と考えてください。
♬ 楽譜通り、もしくは後ろ寄りで弾くべき16分音符
どういった作品で
どういったところで
付点が鋭くならないほうがいいのかは
正直「曲想による」としか言いようがありません。
例を挙げるとすると、
以下のような「ファンファーレ」では
原則楽譜通りに弾くべき。
「楽譜通りのリズム」で演奏したほうが
キビキビした印象になります。
(譜例)
16分音符が「後ろ寄り」で演奏されることさえある音型です。
前寄りでは「だらしない印象」になってしまいます。
いずれにしても
このケースでは3連符と区別出来るように演奏するべきです。
前寄りだと区別できません。
♬ 前寄りで弾くべき16分音符(慣例的な例外)
慣例的な例外があります。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
点線で示した箇所を見てください。
左手は16分音符で書かれていますが、
これはJ.S.バッハ(およびその時代)の特徴的な記譜法で、
実際は右手の3連符の3つ目の音と合わせて打鍵します。
16分音符のリズムに右手を合わせるのではなく、
3連符のリズムに左手を合わせます。
つまりこのケースでは
「付点リズムが前寄りに詰まる」
ということです。
どうしてこのような慣例が出てきたのかについては、
という記事をご覧ください。
特にバロック作品や古典派作品には
記譜上の慣例がたくさんあるのです。
モーツァルト「トルコ行進曲」の曲頭で見られるような
「非和声音は拍頭につけるときには大きい音符でつけてはいけない」
というのも、そのうちのひとつですね。
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