前回のご覧に入れた
という記事の中で、
以下のように書きました。
これは
特に中級以上になってくると必須。
◉ ぜったい拍に入らない極端な跳躍
◉ ぜったい拍に入らない細かなパッセージ
なども多く出てくるから。
今回は、後者、
「ぜったい拍に入らない細かなパッセージ」
こちらについて取り上げます。
具体例を挙げます。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第18番 変ホ長調 作品31-3 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、53-57小節)
53小節3拍目には「12連符」が出てきますが、
この楽曲のテンポを考えると
ほぼ確実に
インテンポで拍へ入れることはできません。
仮に、入れられる超人的なテクニックを持っていたとしても
前後関係からすると機械的に聴こえるだけなので
やめたほうがいいでしょう。
ではどうすればいいかというと、
前回の記事と同様。
「拍を引き伸ばしている感覚を持ちながら演奏する」
このようにしましょう。
53小節目を
「イチ・ニ・サーーン」
などというように
「サン」を引き伸ばす意識を持つ。
ぜったいに「サン」の感覚を放棄しないでください。
それをしてしまうと、
次の小節の「イチ」が崩れます。
それに、
拍を意識しておくと
仮に「暗譜」がとんでしまったとしても
いずれかの拍頭から弾き始められるので
そういった点でもメリットがあります。
(再掲)
せっかくですので、
こういった経過的局面の演奏ポイントをお伝えします。
12連符のあと
54小節目で通常の16分音符に戻るので
普通に演奏するとテンポ感が変わりすぎてギクシャクします。
ここでは
「12連符の最後の3つの音をテヌート気味にやや引き伸ばして演奏する」
このようにすると、
54小節目へ違和感なく連結できます。
実線カギマークで示した3つの音のこと。
(再掲)
もう一点。
57小節目から通常の「メロディ+伴奏」の音楽へ戻ります。
こういう場合、
その直前の点線カギマークで示した16分音符を使って
57小節目からのテンポを作ってしまうといいでしょう。
そうすると、スムーズに戻ることができます。
(再掲)
本題はここまでですが、
もうひとつだけ考えてみましょう。
なぜベートーヴェンは
拍に入らないような12連符を
わざわざ書いたのでしょうか。
あくまでも予想ですが、
そのヒントは54-55小節にあると考えます。
54-55小節は
各拍ごと「連桁(れんこう)」が分断されずに
すべての16分音符がつながっていますよね。
(少なくとも原典版ではそうなっています。)
つまり、
53-56小節あたりは
「即興的な自由さ」
をイメージしていたのではないかと感じるのです。
そう考えると
12連符が出てくることも納得できなくはありません。
ではなぜ、
53小節目と56小節目は
連桁が分断されているのかというと
これらの小節は
各拍ごとに音価が異なるので
つなぐと単純に見にくいからでしょう。
正解はベートーヴェンにきかないと分かりませんが、
こういったことを考えながら
巨匠の作品と向かい合うのって、
楽しいと思いませんか。
一種の「再現芸術」ともいえるクラシック音楽だからこそ
感じることができる楽しみです。
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