具体例を見てみましょう。
楽曲が変わっても考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、299-305小節)
ペダリングの決定に関しては
楽曲理解が欠かせませんので、
まずは、譜例の部分に関して
分析的な観点で見ていきましょう。
譜例のはじめ、
299-300小節の下段に見える付点2分音符はメロディです。
では、301小節目では
メロディはどこへ行ったのでしょうか。
上段に丸印で示したAs音がありますが、
この音は、メロディではなくバス。
同じ付点2分音符だからか
メロディと勘違いされてかなり強調されているのを
耳にすることもありますが、
その解釈は疑問です。
矢印で示したように
それまでメロディだったH音は
8分音符の動きに出てくるC音へと解決しますが、
とうぜん、この動きはメロディではありません。
つまり、
メロディは301小節目で伴奏へと吸収され、
301小節目はメロディ不在ということ。
(再掲)
カギマークで示した高音からメロディが戻り、
手を交差して
低音のバス兼メロディへ移っていきます。
「301-303小節はずっと同じ和声」
ということに気が付ければ、
「丸印で示したバス音を3小節間ペダルで残す」
というやり方も一案だと分かります。
(再掲)
ここまでを踏まえて
再度、譜例に書き込んだペダリングを見てください。
2段に分けて補足したペダリングのうち
上段のほうは
バスが3小節間のびているものとして
長くペダルを使ったもの、
下段のほうは
バスは印象として耳に残っているものとして
ペダル自体は1小節ずつ踏み替えてしまうもの。
この作品では
モーツァルトのピアノ音楽としては
幅広い音域が使用されていたり、
また、手の交差などのテクニックが用いられていることから
交響曲を聴いているような印象も受けますね。
そういったことを考えると、
上段のペダリングのほうがベター。
バス、伴奏、メロディの3要素を
多層的に聴かせることができるペダリングだからです。
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