具体例を見てみましょう。
楽曲が変わっても考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、20-21小節)
この楽章はロンド形式ということもあり
1小節目と同じ形が他に5回(同じセクションが計3回)も出てくるのですが、
それぞれ、右手で弾く内容は変奏されて変化しています。
左手で弾く内容はまったく同じかと思いきや、
4回目にあたる譜例の20小節目のみ
やや異なっています。
他の5回はすべて
譜例の丸印で示した音が長3度上のD音。
ちょっとしたことなのですが、
こういうところが重要かつ、暗譜で足を引っ張るタネ。
繰り返しで少しだけ変わったところには
マーキングするに限ります。
マルをつけるなり
エクスクラメーションマークをつけるなりして
目立たせてください。
目立たせておかないと、
慣れていない譜読みのうちは
ごっちゃになって
気付いたときには
他と同じように弾いてしまっているでしょう。
(再掲)
譜読みをしているときには
マーキングを視界に入れていればいいわけですが、
いざ暗譜するとなったら
どうすればいいのでしょうか。
何回目が異なっているかというのは
暗記をすべきなのでしょうか。
少なくとも、この作品に限っては
その必要はありません。
なぜかというと、
メロディを見ると
丸印をつけた音がD音ではなくB音に変えられた理由が
明らかだからです。
(再掲)
この楽曲の主調はEs-dur。
20小節4拍目はEs-durのⅤであり
21小節目でⅠになっています。
つまり、ⅤのところにとってのD音は
導音にあたるのですが、
譜例の20小節目の最後では
メロディにD音がきていますよね。
つまり、左手にもD音が出てくると
導音重複(和声学では禁則)でバランスを欠いてしまうため
メロディを優先させて左手側のD音を避けたのでしょう。
(再掲)
譜例では20小節目のみを掲載していますが、
他の5回はメロディが変奏されていて
ちょうど話題としている瞬間には
メロディにD音が出てこないので、
左手側にD音を使って
導音が欠けないようにしたと考えられます。
このようにとらえると、
「4回目だけ変わっている」
などとムリやり暗記しなくても
メロディをしっかりと覚えていれば
左手も間違えないで弾くことができます。
少なくとも、この作品に限っては。
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