ピアノ演奏で気をつけなければいけないことのひとつが
「音楽がきちんと横へ流れているか」
ということ。
音楽の流れを止めてしまういちばんの原因は
「不自然な間(ま)」です。
これは一種の「クセ」でもあるので、
自分では気付きにくかったりもする。
さて、「不自然な間(ま)」が出来てしまいやすい箇所は
どこなのでしょうか?
「小節の変わり目」に注意
「不自然な間(ま)」が出来てしまいやすい箇所の代表が
「小節の変わり目」。
こういったところは「音楽的な切れ目」になっていることも多いのですが、
原則、音楽が止まってしまっては不自然です。
対策としては、
「メロディラインに書かれているスラーの長さを確認しておく」
ということが挙げられます。
そして、少なくともそのあいだは一息で演奏するようにしてみましょう。
楽曲をつめていくと
さまざまなニュアンスが必要になってきますが、
まずはこの基本を徹底すれば集中治療になります。
J.S.バッハの作品など「スラーが書かれていない作品」もありますが、
そういった楽曲でも
メロディを歌ってみて
「メロディの区切れでないところでは、間(ま)を入れないようにしてみる」
このようにすると
音楽が流れるようになるでしょう。
「カデンツの着地点」に注意
「小節の変わり目」と一部共通する内容ですが、
その中で「カデンツの着地点」にも注意が必要です。
具体例として、次の譜例を見てください。
J.S.バッハ :「イタリア協奏曲 BWV 971 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、29-30小節)
ここは「F-dur(ヘ長調)のカデンツ」になっています。
「カデンツの着地点(トニックになる箇所)」
つまり、
30小節目の頭へ入るときに「不自然な間(ま)」を空けないように。
矢印で示した箇所です。
念のため補足ですが、
あらゆる楽曲では
ニュアンスとして「一瞬の時間」をとることはあります。
また、強調表現として「一瞬の時間」をとることもいくらでもあります。
一方、それが極端だと音楽が止まってしまうのです。
「すべてをメトロノームに合わせないといけない」
と言っているわけではないことは
補足しておきましょう。
「rit.やrall.の直後」にも注意
これも「小節の変わり目」と一部共通する内容ですが、
あわせて注意が必要な項目です。
rall. や rit. というのは非常に難しい音楽表現で、
やり方を間違えてしまうと音楽が止まってしまいます。
rit. をしても、a tempo への移り目は
別の「間(ま)」を空けないことが大切。
「別の」と書いたことに注目してください。
rit.をする以上、音楽が広がること自体は自然なことです。
一方、a tempo のところ(もしくはそれに準じるところ)の入りで、
「ヨイショ」とばかりに
「別」に呼吸を入れてしまうことが音楽を止めてしまう原因。
非常によくみられる傾向です。
具体例として、次の譜例を見てください。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、16-17小節)
一部の記号などは省略しています。
riten. は「17小節目の頭」へ向かってかけていきます。
もうお分かりですね。
矢印で示したところで
“別の”「間(ま)」を空けないことが大切。
ここではメロディラインのスラー自体は切れていますが、
音楽の流れを考えると
「間(ま)を空けてください」
という意図ではないことは明らかですね。
先ほども書きましたが、
今回の内容は
一種の「クセ」によるものでもあるので、
自分では気付きにくかったりもする。
記事の内容を踏まえたうえで
ICレコーダーなどで演奏を録音してみると、
今まで気づかなかったところで
不自然な間(ま)が空いていることに
驚く方もいらっしゃるかもしれません。
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