具体例を挙げます。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
シューマン「ピアノソナタ 第3番 ヘ短調 Op.14 第3楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲尾)
左から3番目の小節を見てください。
フェルマータ付きの全音符に
クレッシェンドが書かれていますが、
これはどのように解釈すればいいのでしょうか。
ピアノという楽器は減衰楽器なので
一度出し終わった音をクレッシェンドすることは
原則できません。
版によっては
この箇所に注が付けられているものもありますが、
基本的には
「作曲家の気持ちとしてのクレッシェンド」
と考えてください。
おそらく、
直後のフォルテで
しっかりと空気感を変えて欲しかったのでしょう。
ティンパニのロールなどがクレッシェンドして
フォルテのトゥッティへ入るイメージをもつといいでしょう。
目を覚ますような印象的なフォルテにしたいところ。
長く伸びているフェルマータ付きの全音符は
かなり小さな音量まで下がっていきます。
つまり、
次のフォルテへ入ったときに
クレッシェンドできないピアノにおいては
ピアニッシモからフォルテへ入ったくらいの効果が感じられます。
ほんらいでしたら
この差をきちんと認識して演奏すべきなのですが、
シューマンがあえてクレッシェンドを書いていることを考えると
クレッシェンドするオーケストラ
をイメージして演奏したほうがいいでしょう。
こういったことは
あくまで想像の世界です。
しかし、
楽譜へのノーテーションは
想像にはたらきかける力があるので
こういったことを想像していく過程も含めて
音楽を読み取っていく楽しさと言えますね。
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