「ペダルの現代技法―ピアノ・ペダルの研究」 著 : K.U.シュナーベル 訳 :青木 和子 / 音楽之友社
という書籍に、
ペダリングについての以下のような解説があります。
(以下、抜粋)
ベートーヴェン「ピアノソナタ 第17番 テンペスト 第1楽章 Op.31-2」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、97-99小節)
クレッシェンドがいちじるしい場合、P.C.はまったく必要でない。
(抜粋終わり)
この一文のみ解説されています。
「P.C.」とは、ペダルチェンジのこと。
このペダリングを実際に試してみてください。
確かに、問題なく成立します。
Ais音とA音という
ぶつかる関係になる音が混在していますが、
ff の強音が pp の弱音をかき消してしまうので
問題は生じないわけです。
なぜ、K.U.シュナーベルは
このようなペダリングを提案したのか考えてみましょう。
ただ踏み替えの手間を減らすためなのでしょうか。
まさかそんなことはありませんね。
まずひとつ考えられる理由としては、
ff のところのジャストで踏み替えるよりも
踏みっぱなしのまま ff へ突入したほうが
ピアノが良く響くから、というもの。
ダンパーペダルを踏んで
すべてのダンパーが弦から開放された状態というのは
言ってみれば「トンネル状態」なので、
ピアノが良く鳴るわけです。
(再掲)
ここで、もうひとつ疑問が出てきます。
それだったら、
「フェルマータの後で一瞬響きを切って、ペダルを踏み込んでからff に入ればいいのではないか」
というもの。
これは、解釈のひとつとしてはアリですが、
K.U.シュナーベルの意図した内容とは大きく異なります。
彼がペダルを踏みっぱなしにするという指示をしている時点で、
「ff へ入る前に、無音の間(ま)を空けないで弾いて欲しい」
というメッセージが含まれているということ。
さまざまなピアニストの演奏を聴いていると
K.U.シュナーベルが提案しているペダリングをとっていないケースもありますが、
筆者は充分検討の意味があるペダリングだと感じています。
特に pp の空気を断ち切るような ff を表現したいときには
「ひとつなぎのペダリング」という解釈は
プラスにはたらきますね。
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