具体例を挙げます。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ショパン「エチュード Op.25-7」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、55-57小節)
56小節目の下段を見てください。
非常に大きな跳躍を繰り返していて
その結果、一部で声部の交差も起きています。
声部の交差って、
ピアノ演奏においては
悩みの種のひとつ。
アンサンブルのように違う音色の楽器で
それぞれの声部を担当すれば
それらのラインを明確に聴き取れます。
しかし、
どちらもピアノの音色で演奏する場合は
演奏上のダイナミクスの差や
ピアノという楽器が出せる音色の差でしか
違いを表現することができないからです。
ちなみに、
グラズノフがこの楽曲を
チェロとピアノのデュオ版に編曲したバージョンでは
以下の譜例のようになっています。
ショパン「エチュード Op.25-7(グラズノフ編曲によるデュオ版)」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、55-57小節)
移調されていますが、
原曲にある跳躍は
そのままチェロが担当。
跳躍にともなう独特なサウンドや
チェロの高い音域のうなる音色が上手く使われていて
非常にespressivoなウタが表現できるように書かれています。
グラズノフ編の演奏音源を聴いてみてください。
できれば、ピアノでもこういうイメージをもって演奏できればベスト。
…ですが、
声部の交差を聴き分けられるように弾くのは
やはり難しく、
巨匠の演奏を聴いても
このあたりは一緒くたになっています。
結局のところ、
ダイナミクスや音色について
各声部への意識をもって演奏しつつも、
最終的には「気は心」で
ベストを尽くしたと思って気持ちの折り合いをつけるしかありません。
他の楽曲の例においても、
ピアノ演奏において声部の交差が出てきたら
最大限の配慮をしたうえで
気は心で乗り切ってください。
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