ダンパーペダルを踏み込むと
すべてのダンパーがいっせいに弦から離れるので
一種のトンネル状態に。
試してみたことがあるかもしれませんが、
この状態でピアノの中へ向かって騒ぐと
大騒ぎになってかえってきます。
手をパチンと叩くと
共鳴してパァーンみたいな響きになります。
要するに、
「この状態では、純粋にピアノが出した音以外のさまざまな騒音・雑音も拾ってしまう」
ということ。
ピアノの内部で起こった音も外部で起こった音も
共鳴することになる。
七難隠してはくれません。
だからこそ、
高くから叩く奏法は良くないとされているんです。
まず何よりも、
叩くと、指が鍵盤にぶつかることによる騒音が立ちます。
鍵盤が鍵床へぶつかる騒音も大きくなります。
また、叩く奏法では
鍵盤が下り始める瞬間に
手の移動にかなりのスピードがついてしまっているため
そのスピードのまま鍵盤が下り始めてしまいます。
したがって、
スナップを効かせたようなハンマーの動かし方ができないまま
弦をぶっ叩くことになるので
音色が散らばってしまう。
鐘をどのようにヒットすれば良く響くのかを
思い出してみてください。
こういった、あらゆる騒音・雑音成分まで
ピアノのトンネルが響かせてしまう。
「ピアノ演奏のテクニック」ヨーゼフ・ガート (著)、大宮 真琴 (翻訳) 音楽之友社
という書籍の中に
以下のような文章があります。
聴き手のなかにおこる音量の感じは、
強弱の度合だけではなく、
音量に比較して雑音を小さくする奏者の能力に依存しているのである。
(抜粋終わり)
「ぶっ叩いた音は近くで聴くと大きい音に聴こえるけれども、遠くまでは届かない」
ということはよく言われ、
実際にそのように感じたことも多いはず。
その理由には
上記のような「叩いたことによるあらゆる騒音・雑音」をすら
ダンパーが解放されたトンネル状態のピアノが共鳴させてしまうから、
というのがあると言えます。
◉ ピアノ演奏のテクニック ヨーゼフ・ガート (著)、大宮 真琴 (翻訳) 音楽之友社
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