【ピアノ】モーツァルト「トルコ行進曲」の前打音の弾き方と練習法

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【ピアノ】モーツァルト「トルコ行進曲」の前打音の弾き方と練習法

► はじめに

 

トルコ行進曲の演奏で特に難しいとされる前打音の処理。

本記事では、モーツァルト時代の演奏習慣を踏まえた適切な弾き方と、段階的な練習方法を紹介します。

 

► 2つの練習ステップ

‣ 1. 拍の前へ出すべきかを判断する:演奏様式の歴史的背景

 

モーツァルト「ピアノソナタ第11番 K.331(トルコ行進曲付き) 第3楽章」

譜例(PD作品、Finaleで作成、101小節目)

譜例1が原曲。この101小節目では右手に前打音の連続が出てきます。

 

作曲者であるアマデウス・モーツァルトは、幼少期に父親のレオポルド・モーツァルトから教育を受けたので、レオポルドの書いた「ヴァイオリン奏法」という書籍はアマデウス作品の演奏にとっても良い指標となります。

 

この書籍から当時の慣習についても想像でき:

・トリルは上から入れる
・装飾音は前へ出さない

などといった、装飾音関連の内容も見えてきます。

したがって、トルコ行進曲の演奏でも原則としては、前打音は前へ出さない方針でいくといいでしょう。

 

‣ 2. 簡略化した譜例を作る:段階的な練習方法

 

(再掲)

前へ出さないとなると、譜例に出てくる前打音の連続が初中級者にとっては結構やっかいになってきます。

前打音のD音を左手の打鍵タイミングと合わせるわけですが、中々弾きにくいと感じる方もいるはず。拍の前へ出してしまえば、訳ないのですが。

良い練習方法があります:

1. いったん、Cis音を無視する
2. 譜例2の練習を繰り返す
3. 譜例3の練習を繰り返す
4. 譜例3のCis音をもっと前へ詰める

 

前打音とCis音以外の2つの音を同時に弾いていることに注目してください。この弾き方はすでに慣例化しており、

レシェティツキー・ピアノ奏法の原理」 著 : マルウィーヌ・ブレー  訳 : 北野健次 / 音楽之友社

という書籍の中で以下のように解説されています。

(以下、抜粋)
前打音については、重音または和音の場合、前打音をその下の音符といっしょにひき、それから旋律的主要音符をすぐに続けてひくべきだということだけ注意しよう。
低音部の伴奏音または伴奏和音は、前打音と同時にひかれるべきである。
(抜粋終わり)

 

この練習をテンポで繰り返して前打音を拍の前へ出さないで両手で弾く感覚を身体へ入れてから、Cis音を戻してあげてください。

もちろん、譜例2のように前打音とCis音以外の2つの音を同時に弾くことには変わりません。Cis音のみが遅れて鳴るということ。譜例3のCis音がもっと前へ寄った状態が仕上がりです。

 

Cis音を戻すときにも注意があります。

予備練習でやっていたように、拍頭の方に重みを入れるつもりで、Cis音は余力でついでに当ててあげる程度にしてください。

D音が非和声音でCis音が和声音なのですが、Cisの方に重みを入れようとすると、前打音を前へ出さない限りAllegrettoのテンポではうまく行きません。

 

► 終わりに

 

この作品に限らず、入れにくい前打音を入れたい時には:

・拍の前へ出すべきなのかそうでないのかを判断する
・簡略化した譜例を作って練習する

これらのステップを踏んで練習しましょう。

 

【モーツァルト「トルコ行進曲」を更に学びたい方へ】

以前に出版していた同書の内容に大幅加筆し、完結編を完成させました。
完結させるにあたって、読みにくい箇所の修正なども行いました。

・大人のための独学用Kindleピアノ教室 [モーツァルト トルコ行進曲] 徹底攻略

 

 

 

 

 

 

 

【本記事で取り上げた参考書籍】

 

・レシェティツキー・ピアノ奏法の原理  著 : マルウィーヌ・ブレー 訳 : 北野健次 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

・レオポルト・モーツァルト ヴァイオリン奏法 [新訳版]

 

 

 

 

 

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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