■時代別に学ぶ「装飾音符の基礎」
♬「拍の前に出す」装飾音符
具体例を挙げます。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、4-7小節の右手)
作曲家や作品によって
装飾音符を「拍の前に出すか出さないか」は異なりますので、
最終的には楽曲ごとに見ていかなくてはいけません。
ただし、全体的な傾向はあります。
譜例でも取り上げた、
ショパンなどロマン派以降の作品の装飾音符は
基本的には「拍の前に出す」のが慣例となっています。
(現代音楽になると、装飾音符の入れ方まで作曲家による指示があることも。)
「拍の前」に出す装飾音符で
いちばん重要なのは、
「装飾音符がかかっている先の大きな音符(幹の音)が、原則、時間通りの位置にくる」
ということ。
この幹の音が正しい位置にこないと
曲の骨格がくずれてしまいます。
「装飾音符を取り払って練習してみる」
というのも
骨格をつかむためには効果的な練習方法でしょう。
♬「拍の前に出さない」装飾音符
モーツァルト「ピアノソナタ ニ長調 K.311 (284c) 第3楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
バロックや古典派の作品の装飾音符は
基本的には「拍の前に出さない」のが慣例となっています。
1小節目(アウフタクトは1小節に数えません。)にラインを入れましたが、
このように
装飾音符は前へ出さずに
拍頭の音と合わせて演奏します。
装飾音符は極めて「短く」入れないと
リズムが曖昧になってしまいますので
気をつけましょう。
♬ モーツァルトの装飾音符の勉強方法
以前の記事で、
レオポルド・モーツァルトが書いた「ヴァイオリン奏法」という本をご紹介しました。
こちらを参考にするのはもちろんオススメですが、
他にも、
「奏法譜から学ぶ」
という勉強方法もあります。
ヘンレ版の「モーツァルト ソナタ集」では、
別紙で「装飾音符の奏法譜」が付属してきますので
それを参考に勉強できます。
ただし、応用できるようにするためには
そのまま弾くのではなく
「どのように装飾を入れているのかつぶさに研究してみること」
これが重要。
それによって、
「こういうパターンの時はこのように装飾音符を入れればいいんだ」
などと自分の糧にしていくことができます。
ヘンレ版などの「信用のある版」による奏法譜だからこそ
取り組んでみる価値はあるでしょう。
◉ モーツァルト: ピアノ・ソナタ集 第1巻/ヘンレ社/原典版
◉ モーツァルト: ピアノ・ソナタ集 第2巻/ヘンレ社/原典版
◉ レオポルトモーツァルト ヴァイオリン奏法 [新訳版]
♬ なぜ?「トルコ行進曲」の装飾音符の疑問
モーツァルト「ピアノソナタ第11番 K.331(トルコ行進曲付き) 第3楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
このように、
16分音符で弾く音符が装飾音符で書かれていて
「なぜ?」
と思ったことはありませんか?
これには研究があり、
「非和声音は拍頭につけるときには大きい音符でつけてはいけない」
という習慣がこの時代にあったと
音楽学で明らかになっています。
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