具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ハイドン「ソナタ 第60番 Hob.XVI:50 op.79 第3楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、71-76小節)
譜例の真ん中(上段と下段のあいだ)のダイナミクス指示が
楽譜に指定されているのですが、
ここに書かれている cresc. をどのように表現するのかが
演奏者に問われています。
ここでは、以下の2パターンのやり方が想像できます。
上段の上に書いたダイナミクス指示は、良くない例。
下段の下に書いたダイナミクス指示は、推奨する例。
それぞれ、書くスペースを上下に分けただけで
書かれている段のみに適用するという意味ではありません。
(再掲)
両方ともクレッシェンドしてはいますが、
これらの違いがわかりますか。
73-74小節に書き込んだ小さなデクレッシェンドがポイント。
つまり、ここではメロディの音型が
1小節単位になっているので
上段の上へ書き込んだように
グーっとクレッシェンドしてしまうと
各フレーズ終わりが強調されてしまうことになり
音楽的に不自然なのです。
以上のような理由で、
全体的にはクレッシェンドしていきながらも
各フレーズの内部は
きちんと音楽に沿って処理することが必要。
したがって、
下段の下へ書き込んだように
ブロックごとにダイナミクスを上げていく
段階的なクレッシェンドにすべき。
(再掲)
ちなみに、
72小節目は
その小節だけでフレーズが終わっているわけではなく
次の小節へ向かって盛り上げていっても
問題ありませんので、
グーっとクレッシェンドする松葉で表現してあります。
今回譜例へ書き入れた2パターンの表現の違いを
よく観察してみてください。
【ピアノ】音型に背かないクレッシェンドの方法
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