実際の楽曲の中には
「前のフレーズの終わりの音であり、なおかつ、次のフレーズの始まりの音」
と分析できる
いわば「鎖のつなぎ目」のような音が
よく出てきます。
例えば、以下のような例。
モーツァルト「ピアノソナタ ト長調 K.283 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、70-73小節)
星印で示した音が、鎖のつなぎ目。
ここでは、フレーズ終わりとしておさめるよりは
フレーズ始まりの音としてやや強調してあげると
曲頭のテーマが戻ってきた印象を強めることができます。
一方、以下のような
「終わりの音に見せかけた始まりの音」
と分析できるものもあります。
ブラームス「6つの小品 間奏曲 Op.118-2 イ長調」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、18-21小節)
ここでのメロディを歌ってみると
星印で示したメロディのA音は
前からのメロディの流れとして感じますが、
ブラームスはスラーでフレーズを改めていますね。
つまりここは、
「前のフレーズの終わりの音ではなく、次のフレーズの始まりの音」
と分析することになります。
細かなことですが、
たったひとつの音をどのように扱うのかによって
音楽のニュアンスが変わるので
作曲家の書き残したことを
よく観察するようにしましょう。
最後に、
このことに関連したネイガウスの名言を紹介します。
「ネイガウスのピアノ講義 そして回想の名教授」著 : エレーナ・リヒテル 訳 : 森松 皓子 / 音楽之友社 より
作曲家は実際に演奏しなければならない100分の1を楽譜に書いています。
ところがそれすらあなたは実行していません。
(抜粋終わり)
◉ ネイガウスのピアノ講義 そして回想の名教授 著 : エレーナ・リヒテル 訳 : 森松 皓子 / 音楽之友社
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