具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
シューマン「ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム)より イタリア水夫の歌 Op.68-36」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
多くの楽曲に出てくる通常のエコーでは
ダイナミクスで対比をつくるだけのケースが多いのですが、
この譜例の部分では事情が異なります。
作曲者のシューマン自身によるダンパーペダルの指示があり、
f によるはっきりとした響きの実像の中から
pp のエコーが生まれてくるような効果が演出されています。
「それが作曲家自身の望んだ音響効果である」
ということが注目ポイント。
ダイナミクスで対比をつくるだけの
多くの楽曲に出てくる通常のエコーでは、
強奏の響きが消えてから弱奏が出てくるので
ある意味、強奏の響きが聴衆の記憶残像として残っていて
そこから出てくるエコーということになります。
実像の中から出てくるエコーと
記憶残像の中から出てくるそれとの表現の違いを
区別して捉えるようにしましょう。
作曲家がペダル指示をしていないケースで
なおかつ、ペダルを使っても使わなくても成立するところでは、
演奏者の解釈でどのようなエコー表現にするのかを考えて
使い分けなくてはいけません。
(再掲)
ちなみに、
シューマンによるペダル指示がどこまで続くのかについて
fp の直前までとなっている版もあるのですが、
妻のクララ・シューマンが編集したものだと
譜例のようにフェルマータが書かれているところまでとなっています。
ここでペダルを離す場合、
ペダル効果が消えることにより
フェルマータで伸ばしている間は
指で残している pp の響きのみが残ることになりますね。
しかも、ダンパーペダルによる反響付加がされていない
ポツンとした孤独な音として。
つまり、
f の実像の中から pp のエコーが出てきて
その後、pp の響きのみが単独になるという
音響的ないくつもの面白みを表現することができるわけです。
Amazon著者ページ
https://www.amazon.co.jp/~/e/B0CCSDF4GV
X(Twitter)
https://twitter.com/notekind_piano
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCBeXKaDXKd3_oIdvlUi9Czg
筆者が執筆しているピアノ関連書籍に加え、
数多くの電子書籍が読み放題になるサービスです。
コメント