「ロー・インターヴァル・リミット(low interval limit)」
とは、
「各音程ごとに定められた、”その音域よりも低くなると響きが濁ってしまう” という限界値」
のことです。
「響きが濁ってしまう = 正しい音程感覚を失う」
ということでもあります。
言葉だと分かりにくいと思うので
具体例を見てみましょう。
(譜例、Finaleで作成)
ロー・インターヴァル・リミットは
音程ごとにおおよその限界値が決まっていますが、
今回は問題となりやすい「長3度」「短3度」に限定して解説します。
演奏する楽器によって多少の違いはありますが、
一般的に「長3度」「短3度」に関しては
上記譜例の音域よりも低くなると
正しい音程感覚を失うとされています。
これらはあくまでもリミットであって
すでに相当響きが重いと感じるはずです。
実際にピアノで音を出してみてください。
あなたがピアノアレンジをするときなどは
これらよりも低い音域で同時発音する音は書かないように気をつけると
響きのクリーンな編曲ができます。
例外があり、
「怖さ」などを表現する時には
あえて
ロー・インターヴァル・リミットを大幅に超えた低い音域で音を密集させて
重い響きを書いたりすることもあります。
もうひとつの例外は、ベートーヴェンです。
例えば有名どころである、
の最終和音を見てみましょう。
譜例(PD作品、Finaleで作成)
先ほどの譜例と比較してみましょう。
3曲とも、ロー・インターヴァル・リミットを大幅に超えて和音が組まれていますね。
どうしてだと思いますか?
悲愴と月光は、
音域5オクターヴ強のヴァルターのピアノを使って作曲されています。
熱情は、
1803年にエラールより送られた5オクターヴ半のピアノを使って作曲されています。
復元楽器などで音を聴いてみると分かりますが、
当時の楽器は
現代のピアノのように倍音をたっぷり含んだ豊かな音はしません。
どことなくチェンバロに近いようなサウンドさえします。
したがって、
ロー・インターヴァル・リミットを大幅に超えている和音を弾いても
現代のピアノで弾くほどには
重い響きにならなかったのでしょう。
もちろん、
作曲家によって音の選び方に個性があるので
当時どんな楽器だったかに関係なく
ここまで低い密集和音は書かない作曲家もいましたが…。
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