ピアノ曲は数え切れないほどあるために
どんな作品を出すのかを
作曲家は試行錯誤するわけで、
それは過去の巨匠の作品を見ていても
伝わってきます。
そんな中にあって、
◉ ただ速く動き回る作品
◉ ただショパンっぽい作品
こういったものばかりを作曲していても仕方がないので
例えば、意外性を含んだ作品を模索したりするわけですが、
この「意外性」ってなかなか難しい。
とうぜん、
聴き手が意外と思うかどうかなので
万人に共通する意外性はないと言ってもいいでしょう。
聴衆にとって、
いきなり大きな音が出て驚かされるのが意外性なのでしょうか。
いきなりギョッとする和声を使われて驚かされるのが意外性なのでしょうか。
これらも場合によっては意外性につながるかもしれませんが、
もう少し広い視野で考えてみましょう。
筆者が意外性を感じる例を
いくつか挙げておきます。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第17番 テンペスト ニ短調 op.31-2 第3楽章」
譜例(PD作品、Finaleで作成、335-351小節)
15小節半もの間、
オルゲルプンクトで
同じ音型が静かに何度も繰り返される。
その後、
突然空気を変えるかのように
ff で第一主題が再現されます。
subitoでダイナミクスが上がるという表現は
確かにとられているのですが、
ただ単に大きな音が出るから意外なのではありません。
323小節目からすでにコーダへ入っている楽曲終盤で
聴き慣れていた主要主題が突然再現されるからこそ
意外さと一種の驚きを感じるのです。
長く続くオルゲルプンクトによる
一種の音楽的なスタティックさ(静的さ)が
その効果をいっそう強いものにしています。
もうひとつの例を見てみましょう。
ラヴェル「ピアノ協奏曲 ト長調 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭のピアノパートのみ)
ピアノパートは
15小節もの間
この音域で分散和音を繰り返し続けます。
やっていること自体は
通常の分散和音なのですが
「ずっと高い音域で、ずっと同じことをやり続ける」
というところにインパクトがある。
◉ ずっと高い音域に居続ける
特に近現代以降の作品では
ときおり聴かれるやり方。
どうしてこれが印象的に聴こえるのかというと、
ピアノというのはとても幅広い音域をもっているので
すぐに広い音域を渡り歩いたりして
手続きを踏み始めるものが多いからです。
他にも、プーランクの作品などでは
不意に
「えっ?何で?」
「何、今の?」
と思うような意外さ、
いってみれば「サプライズ」が挟み込まれてくる
作品が多くあります。
意外性の表現方法にも限りはありません。
日頃、ピアノ作品を練習する中で
意外性があって面白いと思う部分があったら
目をつけておいてください。
楽曲理解が深まりますし、
いずれピアノアレンジに手を出すときの
引き出しにもなるはずです。
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