◉ どのようにアゴーギクをつけるか
ということは、
非常に難しい問題です。
解釈版に目を通すことで
ひととおりのヒントは書いてありますが、
譜面や文章にしている以上、
どうしても完璧な解説は期待できません。
また、
ロマン派の作品などにおける
微妙なアゴーギクについては
言葉で説明しようがありません。
筆者は、ウィーンで現地の先生に
この件について質問したことがあります。
答えはあっさりしたものでした。
「簡単さ、口で歌ってみればいいんだよ」
とのこと。
これはとても良い「曲想のつけ方・見つけ方」だと
今でも思っています。
我々は
口で歌おうと思えば
抑揚をたっぷりつけることができます。
表情豊かなデュナーミクを伴って。
また、揺れ動きも上手く表現できます。
呼吸をしている以上、
テンポをゆるめるべきところで
ゆるめなければ歌えないので、
必然とフレージングに合った自然なアゴーギクがでてくるのです。
一方、
ピアノへ向かうと
なかなかこれができないのです。
「呼吸をしなくても弾けてしまうから」
というのが大きな理由のひとつでしょう。
もちろん、
歌い方にもその人物の音楽性がでるので
歌えばすべて上手くいくかと言えば
そうとは限りません。
だからこそ
自分の音楽性を育てるために
良い演奏を聴いて学んだりと
日頃からのありとあらゆる学習は必要です。
そうは言っても、
やはりピアノを通して考えるよりも
歌ってみたほうが音楽を捉えやすい部分があるのは確かです。
筆者は長い間ピアノをやってきましたが、
それでも
デュナーミクやアゴーギクを探る際に
「歌う」という方法を必ず取り入れています。
取り組みのコツは、
「表現を大げさにつけるつもりで歌ってみること」です。
そうすれば、
ピアノへ向かっているだけでは
気がつかなかったことを
たくさん発見できるでしょう。
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