たびたび触れていますが、
繰り返しにおいて
「音楽の内容は似ている、もしくは同じだけれども、少し異なっている」
こういったところは要注意で
整理して把握しておく必要があります。
そうでないと、
アクシデントが起きたり
暗譜にも影響が出てきてしまう可能性があるからです。
具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
シューベルト「ピアノソナタ第7番 変ホ長調 D 568 第4楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成)
提示部の61-63小節では
B-dur(この楽曲における属調)で出てきている内容が
再現部の199-201小節では
Es-dur(この楽曲における主調)で出てきています。
ただ単に移調されただけではありません。
スラーのかかり方に違いはありますが、
それ以外にも5つの違いが見られます。
(再掲)
譜例に書き込んだ番号を見てください。
② 提示部では decresc. が書かれているが、再現部では dim.
③ 提示部ではバス音を付点4分音符で打ち直しているが、再現部では付点2分音符の伸ばし
④ ここは①と同様
⑤ 提示部では下段の和音にスタッカートが書かれていないが、再現部では書かれている
これらの相違点は
ひとつの版に依存したものではありません。
では、どのように整理すればいいのでしょうか。
(再掲)
①、③、④については
音の違いとして明らかに書き分けられているものなので
確実に弾き分けましょう。
②に関して、
必ずしもすべての作曲家が
decresc. と dim. をひとつの楽曲中で使い分けるわけではありませんが、
シューベルトの dim. では
「テンポをゆるめる」という意味もあわせもっている
とする考え方があります。
差をつけていないピアニストもいますが、
細かく表現するのであれば
「だんだん弱く」に加えて
テンポ変化も考慮していいでしょう。
⑤に関しては、
どちらか一方に統一してしまっていいと考えています。
例えば、提示部のほうにもスタッカートがついたからといって
音楽そのものに①〜④のような大きな影響はありませんが、
統一がとれるので
暗譜は断然しやすくなるからです。
上記のような判断をどこまで楽譜に忠実におこなうかは
「楽譜の比較」は前提として
「音楽的に統一してしまって問題ないかどうか考える」
などといった、こちらの判断次第の部分もあります。
とうぜん、⑤でおこなったような
「暗譜がしやすいから統一する」などという演奏者側の都合は
優先度を低くしておき、
できる限り楽譜に書かれていることへ寄っていく必要はあるでしょう。
どこが異なっているのかを整理して理解しておくだけでも
学習はずいぶんと進めやすくなります。
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