■基礎:rit.の表現で注意すべきこと「6選」
1. rit.からa tempoへの変わり目に注意
rit.でゆるめられたテンポは
小節の変わり目などで
「a tempo」になることが多いのですが、
rit.は、
やり方を間違えてしまうと
音楽が止まってしまいます。
「rit.をしても、小節の変わり目は間(ま)を空けない」
これが大切。
「小節と小節がスムーズにつながっているか」
これをチェックしましょう。
ポイントは、
「音楽の流れの中で呼吸する」
ということ。
小節の変わり目で
「ヨイショ」とばかりに呼吸を入れると、
そこに不自然な「間(ま)」が空いてしまう結果となります。
2. rit.を始める位置に注意
rit.と書かれているのを見たときに
「書かれているその箇所」
がすでに遅くなってしまっていませんか。
rit. をかけ始める位置が早すぎると
音楽の方向性が見えにくくなります。
書かれているその箇所というのは
まだテンポはゆるんでいません。
「そこからゆるめ始める」
ということです。
「rit.をかけ始める位置は後ろ寄りで」
これを意識しましょう。
そうすると結果的に自然なrit.に聴こえるでしょう。
3. rit. は自然の法則に従ってかけていく
rit.を「急激に」かけすぎたりすると
聴いた印象が自然ではなくなってしまいます。
作曲家がそのように指示している場合は話は別ですが、
基本は
「rit.も自然の法則に従う」
これが重要。
「ブランコ」を思い出してみてください。
揺らすのをやめると
「一気に」揺れ幅が小さくなるのではなく
揺れながら「だんだんと」揺れ幅がおさまっていきますよね。
「バウンドしているボール」も、
余程ペチャンコなボールでない限り、
バウンドしながら
「だんだんと」はねる幅がおさまっていきますよね。
これらが自然の法則。
音楽が自然に聴こえる秘訣もここにあります。
4. 楽曲途中のrit.は「終わった感」が出過ぎないように
楽曲途中でrit.をするときには、
曲途中であるにも関わらず
「音楽が終わった印象」
が強く出過ぎてしまわないように、
程度のバランスを考えることが重要。
例として「映画」の話をしましょう。
映画を観ていると
音楽(BGM音楽)が完全に終止しないで
「えっ、今の曲はこれで終わりなの?」
といったような、
ある意味「中途半端」で終わっている楽曲が
たくさん出てきます。
その意図するところは
「音楽で終わった印象を出しすぎないこと」なのです。
基本的に映画の中には音楽が何曲も出てきますが、
毎回毎回トニックで完全終止をしたり、
毎回毎回 rit.をして楽曲を締めくくってしまうと、
その都度「段落感」がつきすぎてしまいます。
そうすると、
その都度、映像自体にまで「段落感」がついてしまうので
具合が悪いのです。
話を戻しますが、
「楽曲途中のrit.は “終わった感” が出過ぎないように」
これが重要です。
5. rit.の直後に「具体的なテンポ数値指示」があるとき
rit.の直後に
「a tempo(もとのテンポに戻す)」
が書かれていることは多いですが、
場合によっては、
rit.の直後に「具体的なテンポ数値指示」が
書かれていることもあります。
そういった場合には、
「ただ単に遅くするrit.」
という意識ではなく、
「その具体的なテンポ数値を導き出すためのrit.」
と考えるとうまくいくケースが多い。
つまり、
「その具体的なテンポ数値」よりも遅くしてしまうと
つながりが人工的になり
音楽的ではなくなってしまいます。
「ふさわしいrit.の加減」
というのは、
直後に書かれているのが
◉ 具体的なテンポ数値指示なのか
これらによっても変わってくるということを
覚えておきましょう。
6.「etwas zögernd イコール rit.」ではない
ドイツの作曲家のピアノ曲に時々出てくる音楽用語に
「etwas zögernd」
というものがあります。
これは、
分かりやすいように
「イコール rit.」と解説している
書籍もありますが、
ほんらい「rit.」とは少しニュアンスが異なります。
etwas zögernd は
「ためらいながらいく」
というニュアンスで演奏すると
ほんらいの意図に近づきます。
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