ピアノを楽しく続けていくためには
好きな楽曲だけに取り組んでいくのもひとつの考え方ですが、
その場合「レパートリー」や「音楽の視野」が
かたよってしまうことも。
そこで今回は、
「レパートリーの増やし方」
について取り上げます。
中級者程度以上の作品を使って解説しますが、
作曲家はさまざまなレベルに合わせた作品を
たくさんのこしているので
どのレベルの方にとっても基本的な考え方は同様だと
理解してください。
■レパートリーの増やし方 基礎〜応用まで
♬ レパートリーの増やし方(基本)
ある程度弾けるようになってくると、
どうしても大曲に挑戦することばかりに気をとられがちです。
それ自体はレベルアップの挑戦として重要なのですが、
ばっかりだと将来人前でまとまったレパートリーを披露する機会があったときに
バランスの良いプログラムを作れません。
例えば音大生によくありがちなのは、
リスト「ダンテを読んで」に取り組んだ後に
ラヴェル「スカルボ」に挑戦して、
シューマン「交響的練習曲」もかじった後に
リスト「ピアノソナタ」を卒試で抜粋で弾いて卒業、
といった具合。
こういった傾向は、
普段ソナチネアルバムなどを学んでいる方も同様です。
どうしても一般的に「難しい」と思われている楽曲ばかりに
気が向き過ぎてしまっていませんか?
それも、どちらかというと
「音楽的な難しさ」というよりは「テクニカル面での難しさ」。
レパートリーの増やし方のオススメは、
◉ 小さなサロンコンサートを開くつもり
こういった意識をもって増やしていくこと。
そうすれば、
「みんなに喜ばれるような作品」や「シンプルな作品」も入ってきて、
バランスのいいレパートリーがつくれます。
これは学習者のレベルに関係ありません。
例えば、バイエル修了程度から取り組める
ベートーヴェン「エリーゼのために」も
演奏会で重要なレパートリーになり得ます。
♬ 実際の選曲方法① 〜大きな作品を軸にバランスをとっていく〜
それでは
◉ 小さなサロンコンサートを開くつもり
という前提で
実際の選曲方法について解説します。
プログラムバランスが難しいのは「お国柄が出る作品」を入れる場合。
バルトークなどは浮いてしまいがちでバランスが難しいので、
こういった作品を入れる場合は
ある程度、近い国の作品で統一感を出すとベター。
例えば、
「リスト」
「リゲティ(この作曲家は高度な作品が多いですが…)」
など。
ラヴェルは、グラナドスなどの「スペインもの」とも好相性。
プログラムとして、
グラナドスの小品、ラヴェルの作品、
そしてメインプログラムに
リストの内容が深めの作品(「バラード 第2番 S.171 ロ短調」など)
を持ってくるのもいいですね。
ポイントは、
「すでに持っているメインの作品を軸に据えたうえで、他のレパートリーを考えていく」
ということです。
♬ 実際の選曲方法② 〜アジアに目を向けてみる〜
別案として、
アジア諸国には優れた作曲家が多くいるので、
「19世紀後半あたりのアジア作曲家から選曲していき、日本の武満徹につなげる」
といったプログラムも、
アジアの音楽史の流れがみえて面白いですね。
プログラム作成(レパートリー作成)にはストーリーが欲しいのです。
武満徹は、
「遮られない休息」中級程度
「リタニ」 中級程度
「雨の樹素描、雨の樹素描 Ⅱ」上級程度
「閉じた眼、閉じた眼Ⅱ」 上級程度
などをはじめとし、
他にも幅広いレベルのピアノ作品をのこしています。
♬ 中・上級者はレパートリーの統一感も考えてみる
「好きな楽曲ばかりに挑戦してレパートリーがかたよってしまうこと」
これをなるべく避けるべきなのは
ここまで記述した通りです。
一方、中・上級者の方でこなせる楽曲数が増えてきた方は、
「あえて統一感のあるレパートリーを作ってみる」
というのも一案。
例を3パターンほど挙げておきます。
◉ J.S.バッハ「2声のインベンション」を全曲演奏できるようにして、20分強のレパートリーにする
幅広い調性を聴かせることができるので、
全体で1曲として捉えると良いレパートリーになります。
◉ シューマン「子供の情景」を全曲レパートリーにする
抜粋で演奏する場合よりも、
「組曲の配列」という点に着目したレパートリーをつくることができます。
◉ ショパン「スケルツォ」を第1番から第4番まで連続で演奏できるレパートリーにする
同じ作曲家でなおかつ、
「同ジャンルの連続番号」を提示することで
その作曲家自身の変化をストーリーとして聴かせることができます。
「レパートリーの増やし方」には
まだまだ工夫できる余地が残されています。
繰り返しますが、
ピアノ作品というのは
ほんとうにたくさんの種類がありますので、
まだ学習が浅い方にとっても選曲の幅はいくらでもあると言えるでしょう。
今取り組んでいる作品それ自体が
一生のレパートリーになる可能性があるのです。
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