■譜読みで読み取るべき5つのポイント
♬ 拍の整理をする
を例に出しましょう。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、12小節目の右手)
多くの学習者がおちいりがちなのが、
「拍を整理できていない状態で音源で聴いたままになんとなく弾いてしまうこと」
この点です。
「拍の感覚がいい加減にならないこと」が重要。
最終的に多少自由に演奏する可能性はあるにしても、
まずは譜例のように、
「各拍のどの位置にどの音価が入ってくるか」
こういったことを譜読みの段階で
ていねいに整理しておくべきです。
それをしておかないと、楽曲の骨格が歪められてしまいます。
♬「カタマリ」から「ライン」を取り出す
を例に出しましょう。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、12小節目の左手)
赤色ラインと水色ラインは
どちらも左手の隠れライン。
「カタマリからラインを取り出す」
というのは、
重要な分析テクニックであると同時に
譜読みの段階で読み取るべき項目です。
♬「ウタ」の表現はメロディだけではない
より冒頭のメロディを例に出しましょう。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、1-2小節)
1-2小節にかけて
G音が5連続で「同音連打」されていますね。
音楽的にはもちろん
2小節目の頭のG音に向かってふくらませていきます。
親切にクレッシェンドは書いてありますが、
仮に書いてなかったとしても
こういった局面では
どの音に向かうかを読み取って表現すべき。
ここで言いたいのは、
「”ウタ” は必ずしも “メロディの流麗さ” で表現されているとは限らない」
ということ。
「メロディ自体は停滞させておいて、ダイナミクスで表現をつける」
というのは、
それ自体が充分に「ウタ」の表現です。
♬「あいまいな音価」に注目
譜読みをしていくときに、
作曲家がいきなり5連符を使ったりと
「あいまいな表現」を求めた瞬間を見逃さないこと。
そして常に
「そのあいまいな要素はなぜ出てきたのか」
を考えるようにすると、
ニュアンスを決定する手がかりになります。
◉ のちほど何度も出てくる5連符を「伏線」として出したのかもしれない
◉ あいまいな要素で「ウタの表現」として聴かせたかったのかもしれない
などと、他にもさまざまなケースが考えられます。
重要なのは、
「作曲家にあいまいな表現を求められた」という事実をきちんと意識することです。
♬ 作曲家が残した「言葉による指示」を見落とさない
武満徹「雨の樹素描 II-オリヴィエ・メシアンの追憶に-」
の高音域部分に、
「Celestially Light」という言葉による指示が出てきます。
こういった、
「書いてなくても成立はしてしまうけれども、書いてあることでグッと音楽の世界へ引き入れてくれる言葉」
に譜読みで敏感に反応しなければいけません。
楽譜というのは
「音程」「リズム」はある程度の正確さを持って書き表せますが、
「音色」などにいたっては書けないことが多くあります。
そこで作曲家は
ときには「言葉」も使って伝えようとしているわけです。
「楽譜に書かれていることは作曲家が伝えたかったことのほんの一部」
ということをふまえると、
あえて書き残された言葉は
少なくとも譜読みの段階でしっかりと読み取っておくべき。
◉ 武満徹「雨の樹素描 II-オリヴィエ・メシアンの追憶に-」
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