ベートーヴェン「ピアノソナタ 第17番 テンペスト 第1楽章 Op.31-2」
の再現部におけるレチタティーヴォのところで、
和声が変わる6小節もの間、
ダンパーペダルを踏みっぱなしにしておくよう
ベートーヴェン自身が書き遺しました。
これにはさまざまな見解があって、
踏みっぱなしにしない演奏もよく聴かれます。
「ベートーヴェンがこの作品を作曲していたときに使用していたピアノは、現代のピアノほど響くものではなかった」
というのが根強い意見。
一方、そんなことはなかったと主張する専門家も存在します。
ベートーヴェンは
このソナタを作曲したときには
ヴァルター製のピアノを使っていたとされています。
最終的には、種々の情報を集めたうえで
「自分はこういう考えのもと、今回はこういう解釈をした」
と言えるようにして
堂々と弾くしかありません。
上記のレチタティーヴォに関しても、
同じピアニストが両方の解釈で演奏している例も
あるくらいですから。
いずれにしても、
「ピアノの歴史を知ることは、ペダリングにも少なからず影響する」
ということを踏まえておきましょう。
別の言い方をすると、
作曲家が指示したペダルを鵜呑みにせず
現代のピアノではそれをどう演奏すればいいのか
を考える材料になる、
ということです。
ちなみに、
ベートーヴェンが使用していたエラール製のピアノについては
「シュナーベル ピアノ奏法と解釈」(コンラッド・ウォルフ 著/千蔵 八郎 訳 音楽之友社)
という書籍の中で
以下のように書かれています。
彼(シュナーベル)がベートーヴェン自身のピアノ(エラール製のピアノ)で実験したところ、
ペダルの効果は、現在のコンサート・グランドの場合と同じように、よく響いていたという。
ペダルは、指示されているとおりに正確に実行されなければならないということ、
そしてまた、どんな場合でも、
そうすることが、音楽的な表現に添うことになるのだということを、
われわれが楽譜を注意深く読み取っていきさえすれば、
明らかに実証されるのである。
(抜粋終わり)
◉ シュナーベル ピアノ奏法と解釈(コンラッド・ウォルフ 著/千蔵 八郎 訳 音楽之友社)
【ピアノ】作風の変化は、ピアノの進化にも目を向ける
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