■譜読みから仕上げまでのロードマップ(初中級者以上向け)
① 楽曲を好きになることからスタート
まずは、楽曲を好きになることが出発点。
ある程度ピアノが弾ける方は
すでに感じたことがあるかもしれませんが、
好きな作品のほうが
あまり好きでない作品よりも
仕上がり良いことが圧倒的。
「好きになる」というのは
本能的なものもありますが
意図的に好きになるように持っていくこともある程度は可能なのです。
「単純接触効果」という言葉があります。
「それほど好きなものではなくても、何度も接すると好感度が高まるという効果」
のことです。
例えば、
◉ 防音マンションで、隣の部屋からいつも聴こえてくる作品を自分も弾きたくなってしまう
などといった経験は私にもあります。
「単純接触効果」がうまく働くと、接触した楽曲が好きになります。
一番有効なのは、
「優れたピアニストの演奏を繰り返し聴く」
これがいいでしょう。
「譜読みする前に同じ楽曲を何度も聴くと、イメージがつき過ぎて良くないのでは?」
という声が聴こえてきましたが、
そんな心配はいりません。
イメージがつき過ぎてどうこうの前に
その楽曲を好きになってください。
楽曲に慣れて親しみを持つことを優先してください。
ある程度経験のある方は、
この段階で簡単な「楽曲分析(アナリーゼ)」をしておくと
後の譜読みの助けになります。
② 片手ずつ運指を決めていく
運指を片手ずつていねいに決めていきましょう。
もちろん暫定で構いませんが
「ひとまず、これでいく!」という決定をしましょう。
それをせずに
弾くたびに運指が変わってしまうと
練習が積み重なりません。
パッセージによっては
両手で分担して弾いたほうがいいところや
上段の音符だけども左手で取ったほうがいいところ、
またその逆なども出てくるはず。
したがって、
片手の運指のみを一気に決めるのではなく
「右手を一段決めたら、左手も一段」
のように区切って、
ある程度同時進行的に決めていくといいでしょう。
さらに言うと、
運指付けの段階で
「ここはこういう風に弾きたい」
などと楽曲の中身を読み取っていく姿勢を持ちましょう。
運指付けというのは
音楽の読み取りと表裏一体なのです。
③ 片手ずつ、もしくは両手でゆっくりと音を拾っていく
暫定の運指が決まったら、
片手ずつ、もしくは両手により
ゆっくりのテンポで音を拾う練習へ入りましょう。
この段階までに
音楽的な部分の読み取りがある程度進んでいることが理想です。
④ おおむね弾けるようになったら、一度録音してみる
両手であわせておおむね弾けるようになったら
一度、通しで録音してみましょう。
◉ 理想のテンポとどれくらい差があるのか
これらを客観的に把握します。
そして、
録音の結果をヒントに
細かいところをつめていきましょう。
なかなかテンポが上がらないところは
「短く区切って速く弾く練習」
なども取り入れてみてください。
「理想」と「録音結果(現実)」とのギャップを
とことん埋めていきます。
⑤ 本番で暗譜するかどうかに関係なく、一度暗譜する
かなり音楽になってきたら、
本番で暗譜するかどうかに関係なく
一度暗譜をしましょう。
そうすることで
音楽の理解が深まりますし
テクニック的にも安定します。
⑥ 暗譜ができたら、一度、机上で楽譜を読み直す
暗譜をしていることによる
演奏者自身にとっての「デメリット」とすると、
「楽譜に書かれている細かなことを忘れている可能性がある」
という部分が挙がります。
暗譜をしているので
◉ リズム
◉ 大まかなダイナミクス
などは覚えているでしょう。
一方、
人間は「忘れる生き物」ですので
譜読みをしたときには意識していた
◉ さりげなく書かれている音楽用語
などを忘れている可能性があります。
机上で楽譜を読み返すことで
こういった抜け落ちを発見しましょう。
楽曲への理解が深まったこの段階だからこそ
「楽曲分析(アナリーゼ)」をやり直すのもオススメ。
曲を始めた頃には気がつかなかった新たな発見も
出てくるはずです。
⑦「通し練習 → 部分練習」の繰り返しで仕上げていく
ここまできたら、
「通し練習 → 部分練習」
この繰り返しで仕上げていきます。
本番へ向けて
「スポット(単発)レッスン」や「参考書籍」などを
とり入れることで
他者の視点からのアプローチも
反映させるといいでしょう。
とうぜん、
この段階になっても
◉ 通し練習の録音チェック & 改善
これらは適宜取り入れるべきです。
当たり前のように思えることだったかもしれませんが、
もし完成度高く仕上げたいのであれば
これらすべての過程をたいせつに学習してください。
運指をていねいに決めたり
録音チェックしたりする過程を
決して省略しないでください。
本記事でいちばん言いたかったことは
指の動きを覚えていく段階で
音楽自体の読み取りもたいせつにする姿勢についてです。
音程とリズムを読んだだけで満足しないこと。
そこから一歩踏み込むことで
音楽を奏でるほんとうの楽しさを感じることができ、
そしてそれが力を伸ばす大きなポイントでもあるのです。
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