具体例を見てみましょう。
楽曲が変わっても考え方は応用できます。
J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第10番 BWV 855 ホ短調 より プレリュード」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、 8小節目)
前の流れから弾いてくると
8小節目の頭の2分音符C音は4の指でとることになります。
しかし、
その後のメロディに出てくる16分音符を弾くためには
3の指に替え指するとやりやすくなります。
替え指のポイントは
「どのタイミングで替えるのかをしっかりと決めておく」
ということ。
弾くたびに替えるタイミングが変わると
本番で失敗する可能性が上がってしまいますし、
そもそもそういう行き当たりばったりの練習では
やっていることが積み重なっていきません。
ここで問題となるのは
決めておく替え指のタイミングをどうするか。
(再掲)
ちなみに、ヘンレ版では
Cの位置に「3」と書いてありますが、
必ずしも
「そこで3の指に替えよ」
という意味ではなく
「その時点で3の指に替わっていればいい」
という意味だと考えておくといいでしょう。
そうすると、
前後が忙しくない、AかBの位置で替えるのが適切。
この楽曲は後半で Presto になりますが
それまでは作曲家自身によるテンポ指示はありません。
J.S.バッハ研究の第一人者であるヘルマン・ケラーは
この譜例の部分、つまり楽曲の前半部分は
♩=63 程度を提案しています。※
※
「バッハのクラヴィーア作品」
著 : ヘルマン・ケラー 訳 : 東川 清一、中西 和枝 / 音楽之友社 より
そのゆったりとしたテンポで弾くとすると
AとBのどちらの位置でも
問題なく替えることができます。
(再掲)
ここで注意して欲しいのは、
A、B、Cのいずれも
ある拍のオモテかウラのジャストであり
決まりのいいタイミングだということ。
決まりの良くない適当なところで替えるのではなく
◉ 2拍目のアタマで替える
などと整理して決定しておくことで
弾くたびにタイミングが変わってしまわないので
ベターのやり方だと言えるでしょう。
替え指をするときの注意点は
「タイミングを決めておき、それも、決まりのいいタイミングで替える」
ここにあります。
◉ バッハのクラヴィーア作品
著 : ヘルマン・ケラー 訳 : 東川 清一、中西 和枝 / 音楽之友社
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