具体例を見てみましょう。
楽曲が変わっても考え方は応用できます。
モーツァルト「ピアノソナタ第14番 K.457 第3楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
運指を書き込んだカギマークの部分を見てください。
この運指はヘンレ版などでもとられているもので、
ペダルに頼らずとも音をつなげられる好例。
しかし、ひとつ問題が生じます。
6小節目の替え指をするあたりが
かなり弾きにくいように感じませんか。
ここで「弾きにくい運指だから」といって即刻却下してしまうと
非常にもったいない。
書かれている運指を切り捨てる前に
これから解説するような
少しの工夫をしてみて欲しいと思います。
(再掲)
5小節目の5の指へ移行するところと
6小節目の替え指をするあたりが弾きにくいので、
これらだけを何とかすればいいわけです。
6小節目の替え指の何が難しいのかといえば、
替え指をした後に
3拍目の音を弾くべく4の指を移動させる際、
黒鍵に引っかかるんですよ。
Allegro assai とは
おそらく性格的なものですし
それほど急速なテンポではありません。
しかし、
ある程度の速度が求められていることも
この部分の問題を大きくしていると言えるでしょう。
(再掲)
では、5-6小節はどのように弾けばいいのでしょうか。
以下のようにやってみてください。
「上行するのにも関わらず左手の4の指の後に5の指がくる難しさ」
を下げるために、
1拍目の音を「4 1」で弾いたらすぐに
手をやや手前へ滑らせながら
3拍目を5の指をつかむ。
4の指が黒鍵へ引っかかるのを避けるために、
1拍目の音を「4 3」で弾いたらすぐに
手をやや手前へ滑らせながら
4の指を5の指へ替える。
替えたら手首を少し上げると
3拍目の音を「4 2」でつかめるポジションになる。
奏者によって手の大きさなどは異なるので
このやり方というのは
必ずしも正解とは限りません。
一方、ここで伝えたいのは
上記の譜例をうまく弾くコツではなく、
少しの工夫をすることで
書かれてはいるもののムリだと思っていた運指も
使える可能性があるということ。
そしてそれが、
後で「切り捨てなくて良かった」と思えるくらい
良い運指の可能性も充分あるということ。
少なくとも、譜例のところでは
「ペダルに頼らずとも音をつなげられる」
という意味では
ぜひ検討するべき運指となっています。
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