以下の譜例を見てください。
J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第7番 BWV 876 変ホ長調 より プレリュード」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、67-69小節)
譜例で示した運指は
アンドラーシュ・シフによる運指です。
さすがに運指に著作権はないので
今回の教材として取り上げさせてもらいましょう。
ふたつのカギマークのつなぎ目を見てください。
Es音を2の指、As音を3の指で弾くようになっていますが、
とうぜん、相当な巨大な手をもっていないと
2と3の指で完全5度をつなげて弾くことはできませんね。
「J.S.バッハの8分音符だから、どう弾くべき」
などという話は置いておいても、
この運指から
「構造的に、Es音とAs音のあいだは切ってしまってもいいのではないか?」
という予測が立つわけです。
(再掲)
実際には、
ひとつ目のカギマークのところは
「上行スケールによるパッセージ」
ふたつ目のカギマークのところは
「Es-durのカデンツにおけるバスライン」
となっていて、
3の運指を振ってあるAs音からは
役割がバスに移行している。
「構造を示すためにも、Es音とAs音のあいだは切って弾くべき」
ということになります。
As音を弾く3の指は
5の指にしてもいいのではと思うかもしれませんが、
3の指にすることで
イヤでもEs音とAs音が分離されるので、
うっかりとつなげてしまう可能性はなくなり
運指でわざとアーティキュレーションを切ることができますね。
この譜例の部分の構造は
運指で示されなくても分かりやすいものでした。
一方、実際にはさまざまな複雑な作品があるので
◉ 運指が、構造を示している可能性はないか?
などといった視点からも推測を立てて
運指の意図を見ていきましょう。
そうすることで
楽曲を理解するヒントになる可能性がありますし、
反対に、自身が運指付けをしていくときには
「ここは構造的に切れるから、わざわざつなげられる運指を使わなくてもいいだろう」
などと、
構造的に理解したうえで
それを活かす運指付けをする力にもなります。
Amazon著者ページ
https://www.amazon.co.jp/~/e/B0CCSDF4GV
X(Twitter)
https://twitter.com/notekind_piano
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCBeXKaDXKd3_oIdvlUi9Czg
筆者が執筆しているピアノ関連書籍に加え、
数多くの電子書籍が読み放題になるサービスです。
コメント