具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ブラームス「3つの間奏曲 Op.117 より 第1曲」
譜例(PD作品、Finaleで作成、49-52小節)
50小節目にも51小節目にも
アルペッジョが出てきますね。
先に51小節目のほうを見てください。
アルペッジョが書かれているところは
直前に右手で演奏したメロディの模倣としての対旋律です。
ブラームスがこのアルペッジョが書いた意図は
大きく次の2つでしょう。
◉ 柔らかいサウンドを得るため
ここでは右手で弾いている別の音符も
上の音域にいることですし
左手では対旋律と伴奏の両方を弾かないといけないので
どうしても埋もれがち。
しかし、
アルペッジョにすることで
親指で演奏する上の音を際立たせることができるうえ、
単純に発音タイミングがズレるので
上の音がよく聴こえるようになります。
加えて、
対旋律という
重要だけれども脇役の要素を
柔らかいサウンドで得るためには
和音でカツン!と弾くよりもアルペッジョで分散にするほうが
望ましかったのでしょう。
ブラームスがどこまで考えてアルペッジョを書いたのかは
誰にも知る由はありませんが、
このようにアルペッジョには
音楽面に与える大きな影響がある。
だからこそ、
原則、
手が届くからといって
勝手にアルペッジョを取り払ってはいけないんです。
(再掲)
次に50小節目のほうを見てください。
こちらは、どう見ても伴奏。
リズムとハーモニーが欲しいだけだと分かりますね。
したがって、
「柔らかい音色を得るためのアルペッジョ」
と考えていいでしょう。
親指の音を特別に際立たせる必要はありません。
アルペッジョにすると
どんな音楽的効果があるのかを知っておく。
そのうえで
「親指の音を際立たせやすくなるけれども、どうするかは演奏者が決められる」
というテクニックとの結びつきが強い部分も
うまく取り入れていく。
こういった観点でアルペッジョをとらえると
音楽を読み取っていく大きなヒントになります。
他にも、楽曲によっては
「ハープのサウンドを模してつけられたアルペッジョ」
が出てきたりと
その発想や表現幅は多彩です。
学習用教材でもない限り、
アルペッジョは
手が届かない演奏者のために書かれているわけではないのです。
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