例えば、
この楽章では
モーツァルトにしては珍しく
ff と pp が出てきます。
原典版で学習している方は気が付いていると思いますが、
モーツァルトは一部の例外を除き
多くのダイナミクスを f と p で表現しました。
「新版 モーツァルト 演奏法と解釈」著 : エファ&パウル・バドゥーラ=スコダ 訳 : 堀朋平、西田紘子 監訳 : 今井顕 / 音楽之友社
という書籍では以下のように解説されています。
モーツァルトの f はとても大きな音から中くらいの音量にわたる、
幅広い範囲を含んでおり、
同じようにモーツァルトの p は、
豊かで歌うような mp からきわめて弱い p までを意味するのです。
《ピアノソナタ ハ短調 K.457》第1楽章展開部の冒頭にある f は、
ベートーヴェンの ff に相当するでしょう。
言うまでもなく、
強弱はそれぞれの作品の枠組みの中で解釈されなければなりません。
(抜粋終わり)
要するに、
そんな中で、わざわざ ff や pp を使用したというのは、
そこに、作曲家の強い意志が見えるわけです。
ときどき、
どんな作品でも
「f のところをあえて p で弾いたりする解釈」
をすることがありますね。
しかし、上記のようなケースでは
そういった解釈が入ってくる余地はありません。
作曲家がわざわざ ff と書いているからには ff なんです。
作曲家があまり使わなかった特徴に目をつけると
このようなことが見えてきます。
別の例としては、
J.S.バッハは
「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV 903」の中で
減和音を多く用いていますが、
普段の彼はあまり用いなかった和音です。
このような、
「その作曲家にとって珍しい特徴」に
どんどん目をつけていきましょう。
そのためには比較対象が不可欠なので
多くの作品を知っている必要もありますね。
◉ 新版 モーツァルト 演奏法と解釈 著 : エファ&パウル・バドゥーラ=スコダ 訳 : 堀朋平、西田紘子 監訳 : 今井顕 / 音楽之友社
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