一部の現代曲では
作曲家が “すべての” ペダリングを指示しているケースもあります。
一方、一般的なピアノ曲では
ペダリングはまったく書かれていないか
書かれていても要所のみ、
という作品のほうが圧倒的多数です。
これはどうしてなのでしょうか。
創作者の視点からすると
大きく3つの理由が考えられます。
◉ 全世界で書き方が統一されていないから
◉ 結構、書くのが面倒くさいから
楽譜が煩雑になるのを避けて利便性を優先するため
まず一つ目の理由としては、
ペダリングを細かく書こうとすると
楽譜が非常に煩雑になることが挙げられます。
どこで踏み込んで
どこで離して
どういう踏み込み方をして
どういう離し方をして
ハーフペダル、フラッターペダル、後踏みなど
他にもあらゆることを書き記すことは
楽譜の情報量を圧倒的に増やします。
もちろん、それらを書くための記譜法は(一応)ありますし
そうしたほうが創作者の意図が細かく伝わるのは事実。
しかし、楽譜の利便性が下がるのも事実。
創作者や出版社が何を優先するかにもよりますが、
そういったことまで考えると
広く親しまれることを目的とした作品の楽譜で
全ペダリングを書いてしまうと
方向性が少々ずれてくるんです。
曲集全体で1曲だけが浮いてしまうのも
避けなくてはいけませんし。
全世界で書き方が統一されていないから
2つ目の理由としては、
全世界で書き方が統一されていないことです。
それこそONとOFFのスイッチ的な指示だけでしたら
市販の楽譜でもある程度統一されていますが、
それ以外のニュアンスについては
創作者によって書き方が千差万別。
その都度、ノーテーションと言われる解説表をつけてお断りするのも
やはり実用面から考えると疑問が残ります。
では、定番の「Ped.」と「お花マーク」なるものを使うか
ということになるわけですが、
「Ped.」の「d」のあたりでもう踏み替える、
なんてことにしょっちゅうなってきたりして
記譜の不確実さの温床、しかも一面お花畑。
創作者にとって心の平安を乱される厄介ごととなります。
平たく言うと、
全世界で書き方が統一されていないし
唯一よく使われる記号は
やや使いにくい、といった感じ。
ソフトペダルやソステヌートペダルも考慮すると
話はもっと複雑になります。
結局、もっとも近くにある解決策は
「演奏者に任せる」になってしまう。
結構、書くのが面倒くさいから
怒られそうですが
結構、書くのが面倒くさいんですよ。
細部までていねいに記すときは特に。
音程やリズム、フレージングやアーティキュレーションなどは
変えられてしまったら成立しなくなるので
きちんと書きますが、
ペダリングに関しては
ある程度までは演奏者の解釈として許容できる部分でもあるので
任せてしまいがち。
ほんとうに重要な部分のみ書いておくことはしますが…。
いろいろと屁理屈を並べてしまいましたが
結局、ほとんどの存命創作者は
どうするのが最善かを
楽曲ごとに考えて決めているはず。
筆者自身は
作曲・編曲どちらにおいても
ペダリングの指定を以下のように統一しました。
◉ 依頼された出版楽譜の場合、その出版社の方針にあわせる(たいていは、要所のみ書く)
◉ レコーディングの場合は時間制約が多いので、楽譜の利便性を優先して要所のみ書く
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