楽譜でどのエディションを使用するかについて
話題になることがあります。
それぞれの使いやすさがあり、
同じ楽曲でも
初心者にとって学習しやすくなっているものや
校訂者の音楽性が強く表れているものなど
千差万別です。
版選びに正解はありません。
多くの校訂者は
たいてい、自分よりもその分野の研究に関しては詳しいもの。
思い切って、
その作品に関しては
すでに買った楽譜の校訂者を信じてみるのもアリでしょう。
一方、一応読んでおいていただきたいのですが
以前から原典版を持っておくように書いているのには
結構重要な理由があるのです。
著 : ヘルマン・ケラー 訳 : 植村耕三、福田達夫 / 音楽之友社
という書籍に
以下のような記述があります。
(以下、抜粋 譜例はFinaleで作成)
[モーツァルトの]へ長調ソナタ(K. Anh. 135)冒頭で、
弧線が小節の頭の前で終っているのは
充分な理由があるのであって、
それによって小節の頭が強調されるのである。
モーツァルトがジュピター交響曲におけるように
弧線を先まで引いている場合には
最後の音はディミヌエンドになる。
(抜粋終わり)
これを読むことで見えてくるのは
第三者にアーティキュレーションを変更されてしまうことの怖さ。
仮に上記、「へ長調ソナタ(K. Anh. 135)」のスラーそれぞれが
次の小節の頭までかけられてしまっていたら
どうでしょうか。
「最後の音符へはディミヌエンドをする」
つまり、
「フレーズ終わりの音としておさめる演奏」
をすることになりますよね。
音楽が変わってしまいます。
実際に、こういう種類の変更がされてしまっている楽譜は
山ほど出版されています。
だからこそ、使用する版について話題になるのです。
勝手に編集されて
ニュアンスの変更に伴い
音楽エネルギーが変更されてしまっている。
◉ レイアウトが見やすい
◉ 校訂者ならではの解釈が学べる
などといったことは重要なことです。
しかし、それはサイドに置いておいても享受できるので、
特に中級以上の段階に達している方は
ある程度信頼のあるとされているエディション
も検討してみるのはいかがでしょうか。
◉ フレージングとアーティキュレーション―生きた演奏のための基礎文法
著 : ヘルマン・ケラー 訳 : 植村耕三、福田達夫 / 音楽之友社
【ピアノ】楽譜の出版社選びに絶対的な正解はない
Amazon著者ページ
https://www.amazon.co.jp/~/e/B0CCSDF4GV
X(Twitter)
https://twitter.com/notekind_piano
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCBeXKaDXKd3_oIdvlUi9Czg
筆者が執筆しているピアノ関連書籍に加え、
数多くの電子書籍が読み放題になるサービスです。
コメント