クライマックスというと
「最高潮の盛り上がり」
を想像すると思います。
楽曲全体で見たときのいちばん定番のクライマックスは
そういったものですが、
別の表現形態もありますので見ていきましょう。
例えば、次のようなもの。
ハイドン「ソナタ 第60番 Hob.XVI:50 op.79 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
cresc. を経て fz に到達し、
曲頭6小節間のクライマックスをつくっています。
ポイントは
「クライマックスのときに、むしろ音自体は薄くなっている」
というところ。
下段は完全に休符ですし
「音の厚み」という意味では
たいした厚さをつくっていないのですが、
上段の3度和音を裸のまま単独で鳴らすことで
むしろ強調される効果が出ています。
クライマックスのつくりかたは
必ずしも
「大きなダイナミクスで厚い和音で」
というわけではないのですね。
ここでのクライマックスは
楽曲全体における真のクライマックスではなく
ひとつの短い単位の中でのクライマックスですので、
楽曲全体で見たときに
複数あるクライマックスのうち
どれがいちばんのヤマなのかを考える必要があります。
そうしないと、真の頂点は決して得られません。
もうひとつ、
別の表現による例を挙げましょう。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、197-198小節)
ここでは、
最高潮まで登った高い音を
クライマックスと解釈してもいいのですが、
筆者の感覚としては
その直後の休符がクライマックスのように感じます。
特に、この譜例のように
エネルギーが放射されたように休符へ突入する場合、
休符になった瞬間のインパクトは
ものすごく大きなもの。
クライマックスの分析というのは、
「楽曲分析(アナリーゼ)」の中でも
もっとも基本的かつ重要なものです。
「楽曲理解」や「演奏に活かす」という意味でも欠かせません。
自身が取り組んでいる作品においても
クライマックスの在り方をよく分析してみてください。
その表現方法の多様さに驚くはずです。
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