「ピアノ・ノート 新装版」
( 著 : チャールズ・ローゼン 訳 : 朝倉和子 / みすず書房)
という書籍に次のような記述が出てきます。
ピアノで作品を弾くとき、
美しい音色の質はメロディの輪郭の描き方と、
和声や対位法の組み立て方で決まる。
これが正しくできれば
(和音が共振し、メロディの統一がとれて輪郭がくっきりしていれば)
美しい響きが得られる。
最初はどうしようもなく醜い響きしか出ないように思えるピアノを弾く場合ですら、
これができれば美しく響く。
(抜粋終わり)
今回話題にするのは、
この「メロディの輪郭の描き方」という部分について。
「自励振動」という用語が使われることもありますが、
弦楽器や管楽器などは
発音した後にその音をふくらませたりと
時間的ダイナミクス変化が自在。
一方、ピアノは減衰楽器なので
発音が終わった音をそのように扱うことは
原則できません。
つまり、
メロディラインを描くときにも
曲線を描くというよりは
点と点を余韻使ってつないでいくようなイメージになります。
少し極端な例を出しますが、
DTMという
平たく言うと
コンピュータでデータをプログラミングして
自動演奏を実現する分野があります。
DTMでは
弦楽器や管楽器のような楽器の音は
ダイナミクスや音色のグィーンという時間的変化を
カーブを描きながらデータで入力します。
しかし、ピアノのデータでそんなことをしたら
とうぜん不自然なことになります。
実際のピアノの特性と同じように
自然な発音や減衰に任せるべきだから。
音色だって、
出し終わった音に関しては
ダンパーペダルの使用による他の弦の共鳴を使ったり
直接弦に触れたりしない限りは
変えようがありませんから。
では、ピアノの場合のデータ入力はどうするかというと、
発音するタイミング、まさにその瞬間における
音の強さと音色をコントロールするデータを入れるわけです。
結局、減衰楽器の表現は
発音時にかなりの比重がおかれることになる。
少しイメージしにくかったかもしれませんが、
実際の演奏においても同様。
要するに
ピアノのような減衰楽器では
「すでに出した音をどうコントロールするか」
ではなく、
「発音時にどのような音量や音色で聴かせて、その点の連続をどのようにつないでいくのか」
ということに比重をおいて表現しているわけです。
感覚的にはすでに理解していたことと思います。
あたりまえのことですが、
この楽器による特性の違いを
今一度踏まえておきましょう。
それがなくては
美しいメロディの輪郭を描くことはできません。
◉ ピアノ・ノート 新装版( 著 : チャールズ・ローゼン 訳 : 朝倉和子 / みすず書房)
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