作曲家の作風というのは
生涯でずいぶんと変化があるものです。
例えば、
ベートーヴェンの初期ピアノソナタと
後期ピアノソナタを比較してみると
その内容の違いに驚くほどです。
一般的に「作風の変化」というと
「聴いた感じ、何となく異なって聴こえる部分」
のことが話題に挙がりますが、
それだけでなく
ピアノという楽器の進化にも目を向けてみてください。
特に、ピアノの楽器としての進化が著しかった古典派を見るときには。
1700年頃、ピアノが生まれた頃は
たった49鍵しかなかったと言われています。
それが150年以上かけて
19世紀の半ばに、
現在一般的とされる88鍵まで拡大されました。
ベートーヴェンが生きていたのは
1770年から1827年であり、
まさにピアノがいちばん進化した時期に
どハマりするのです。
彼は生涯にわたって、
シュタイン、ヴァルター、ブロードウッド、
シュトライヒャー、グラーフ、エラール、
など、他にも数多くのピアノに触れた作曲家です。
作品を通して
どんな時代にどんなピアノを触っていたのかが推測できるほど
楽器と作品が密接に結びついています。
こういった前提を踏まえておくと
なぜ、以下の譜例のように
初期の作品の高音部の音にカッコが付けられているのかも
理解できます。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第7番 ニ長調 作品10-3 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、21-22小節)
詳しい理由は、
以下の記事を参考にしてください。
このようなことを経て
楽器とともに作品の音域が広がっていったことも
作風の変化のひとつですし、
楽器の変化にともなって
ベートーヴェンが指示した装飾音の表現に変化が見られること自体も
作風の変化のひとつ。
こういったことは
何となく聴いた感じでもわからないことはありませんが、
基本的には
楽器の歴史を知ったうえで
作品がそのようになっていることを確認してはじめて
しっかりと理解することができます。
楽器のことを知るのに特別な才能はいりません。
そこに時間と熱意を傾ければ
理解することができます。
「作風の変化は、ピアノの進化にも目を向ける」
これを前提に学習してみてください。
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