【ピアノ】ベートーヴェンの初期作品に見られるカッコの意味

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♬ ベートーヴェンのソナタで、高音部にカッコが出てきて戸惑った

♬ カッコの音を省いて弾くとなんだか物足りなく感じた

♬ カッコの意味をきちんと理解したい

 

こういった方へ向けた記事です。

 

 

ベートーヴェンの初期作品を弾いていると、

高音部の特定の音にカッコが付けられていて

疑問に思ったことはありませんか。

 

例えば、次のような例です。

 

ベートーヴェン「ピアノソナタ第7番 ニ長調 作品10-3 第1楽章」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、21-22小節)

22小節目の高音部Fis音に()が付けられています。

なんとなく勘づいた方もいらっしゃると思いますが、

これは

「この音が出せるピアノを使っているのであれば、弾いてください」

という意味です。

どうしてこんな書き方がされたのかを理解するには

歴史を知らなくてはいけません。

ごく簡単に解説します。

 

1700年頃、ピアノが生まれた頃は

たった49鍵しかなかったと言われています。

それが150年以上かけて

1800年代の半ばに、

現在一般的とされる88鍵まで拡大されました。

ベートーヴェンが生きていたのは

1770年から1827年であり、

まさにピアノがいちばん進化した時期に

どハマりするのです。

 

「ピアノソナタ第7番 ニ長調 作品10-3」

が作曲されたのは、

1790年代の末と言われています。

この頃のヴァルターのピアノには

主に2パターンの音域があり、

「F1 – f3の5オクターヴ」

もしくは、

「その長2度上まで」でした。

つまり、

「F1 – f3の5オクターヴ」では、

譜例のFis音には半音届かないのですが、

さらに長2度上まで出せるヴァルターのピアノでしたら届くのです。

 

おそらく、

この両者のヴァルターのピアノがあることを

ベートーヴェンは知っていたのでしょう。

したがって、

「この音が出せるピアノを使っているのであれば、弾いてください」

という意味で

高音部Fis音に()が付けられている。

そのように、昔からの研究で言われ続けています。

 

ちなみに、

譜例のソナタは「op.10-3」でしたが、

作品番号でいう次の作品、

「ピアノ三重奏曲 op.11」のピアノパートにも

「全く同じ高さのFis音」および「その半音上のG音」に

()が付けられています。

これも同じ理由だと考えていいでしょう。

 

ベートーヴェンは生涯にわたって、

シュタイン、ヴァルター、ブロードウッド、

シュトライヒャー、グラーフ、エラール、

など、他にも数多くのピアノに触れた作曲家です。

作品を通して

どんな時代にどんなピアノを触っていたのかが推測できるほど

楽器と作品が密接に結びついています。

 

ベートーヴェンの作品を勉強していて

何かつまづいたりした時には

その作品を作曲したときに彼がどんなピアノを触っていたかを

調べてみてください。

何か小さなことでも、きっと発見があるはずです。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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