譜読みをしていると
「ミスプリントかも」と思うときは多々あります。
そういったときの実際は
たいてい、以下の3パターンのいずれかによるでしょう。
② 出版されたときに誤植されている
③ 自分の勘違い
①②に関しては、よくあることです。
例えば、
バッハ=ブゾーニ「シャコンヌ」という作品は
明らかな抜けの多さで知られていて
それらが何箇所も指摘されてします。
また、
作曲家自身による手書きに関する楽譜(スケッチ、手稿譜、自筆譜など)では
書かれた内容の解読が困難で
古くから間違って伝えられてきているものもあるでしょう。
しかし、③の自分の勘違いは
もっとよくあることです。
例えば、以下の譜例を見てください。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、44小節目)
上段の内声で丸印を付けた音に注目。
この音だけ8分音符で
他の内声は16分音符ですよね。
これは、よく楽譜を見れば理由は分かるのですが
ミスプリだと早とちりしてしまう方もいるはずです。
まず、前提知識として知っておきたいのが、
再現部の同所でも8分音符になっているので
ミスプリの可能性は低いのではないかと疑うこと。
もうひとつ大事なのは、
「非和声音は拍頭につけるときには大きい音符でつけてはいけない」
という習慣がこの時代にあったと
音楽学で明らかになっていると知っておくこと。
この楽曲でも、
一部の例外を除いて
ほぼすべてそのようになっています。
つまり、弾き方は下の奏法譜のようになります。
(再掲)
もう分かりましたよね。
丸印で示した内声の音は
8分音符のメロディの下に付けられているから
一応8分音符で書かれているだけのこと。
実際にメロディはすべて16分音符で演奏するので
8分音符で書かれた内声も
奏法譜のように16分音符で演奏すればいいんです。
このような弾き方はすでに慣例化していて
「レシェティツキー・ピアノ奏法の原理」 著 : マルウィーヌ・ブレー 訳 : 北野健次 / 音楽之友社
という書籍の中で以下のように解説されています。
前打音については、
重音または和音の場合、前打音をその下の音符といっしょにひき、
それから旋律的主要音符をすぐに続けてひくべきだということだけ注意しよう。
低音部の伴奏音または伴奏和音は、前打音と同時にひかれるべきである。
(抜粋終わり)
ただ楽典的に楽譜を読めればいいだけではなく、
演奏にはさまざまな周辺知識も必要であることを
理解しておきましょう。
◉ レシェティツキー・ピアノ奏法の原理 著 : マルウィーヌ・ブレー 訳 : 北野健次 / 音楽之友社
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