具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、121-128小節)
ここでは2つの声部にトリルが書かれていますが
なぜ、あえて内声の2声部のみに書かれているのかを
考えてみましょう。
121小節目から
下段で「So Mi Re」という第2の旋律が繰り返されていますので、
トリルが書かれている小節でも
「So Mi Re」の「Re」を聴かせたいわけです。
しかしここでは「Re」の音を内声に設置しているので
強調が難しく
なおかつ、
ピアノは減衰楽器なので音を持続できず
メロディラインが不明確になってしまいます。
そこで、
Reの音をトリルにすることで
持続の効果を強め、
「So Mi Re」というラインを拾い上げています。
演奏上は
「So Mi」のニュアンスをよく聴いたうえで
「Re」のトリルのバランスを決めなくてはいけません。
「メロディをわざわざ内声に配置する必要があったのか」
ということに関しては、
上段のFaやLaが1オクターブ下では
ラヴェルのイメージに合わなかったのでしょう。
トリルにより持続の効果が高まり、彩色もされます。
もちろん、もう一方のトリルはハモリだと思ってOK。
ここでは他の声部は伸ばしているだけですので
単独トリルよりも
2声が一緒にトリルすることで
音響が薄くなってしまう印象も和らいでいます。
今回の例は、
平たく言うと
「メロディラインを明確にするトリル」
であり、
減衰楽器の特性をうまく補助するような
効果的な書法になっていることを
読み取りましょう。
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