サイレント・キーとは、
「音を出さないフィンガーペダル」
のこと。
現代作品ではよく出てきますが、
もっと古典的な作品においても
演奏者の判断次第で取り入れることができます。
サイレント・キーは
弦の共鳴を利用するものなので
原則、生のピアノで使用するテクニックです。
具体例を見てみましょう。
ブラームス「ピアノソナタ第3番 ヘ短調 Op.5 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、54-55小節)
右側の小節の2-3拍目を見てください。
Des – C とメロディが短2度で動くので
ダンパーペダルを踏みっぱなしにしておくと
濁ってしまいます。
だからといって、
ダンパーペダルを踏みかえてしまうと
左手で演奏した音響が消えてしまいます。
12度音程のアルペッジョなので
バス音などを指で残しておくことは
余程手が大きい奏者でない限りできませんから。
直前の文脈上、ソステヌートペダルの活用も難しい。
では、ダンパーペダルを半分だけ踏みかえてみるのがいいのか…。
いくつか策はありますが、
この譜例において
もっとも問題解決になるのは
サイレント・キーの活用です。
(再掲)
菱形で示した音がサイレント・キーで用意されるべき音。
55小節2拍目のメロディDes音を弾いたら
音を出さないように
菱形の音を押し下げておく。
そして、3拍目のメロディC音のときに
ダンパーペダルを踏みかえる。
そうすると、
メロディは濁らせずに
左手で演奏した音響をある程度残すという
ふたつのことが両立できます。
どういった仕組みなのかを説明します。
まず、前提として以下の2点を踏まえておいてください。
ダンパーペダルを踏み込むと、すべてのダンパーが弦から離れる
②
ダンパーペダルを使用していない場合、
鍵盤を下ろしているあいだは
その鍵盤の音に対応するダンパーのみ上がったままになる
(再掲)
ダンパーペダルを使って弾いたときには
すべてのダンパーが上がっているので
弾いていない音の弦も含め
すべての弦が共鳴しています。
ここでダンパーペダルを上げると
ほんらいはすべてのダンパーが弦に密着して
その響きを止めるのですが、
サイレント・キーを使用することで
それらの押し下げた鍵盤の音に対応するダンパーのみは
上がったまま保持されます。
鍵盤を押し下げているのだから、とうぜんですよね。
ダンパーペダルを踏みかえても
サイレント・キーに対応する部分の弦だけは
響きが止められることはないということ。
したがって、
全弦が響いているときのような音響の豊かさはなくても
ある程度、音響を残すことができるのです。
一応仕組みを解説しましたが、
とにかく、譜例通りに試してみてください。
身につけておけば
意外と活用機会のあるテクニックです。
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