「ピアノ・テクニックの基本」ピーター コラッジオ (著)、坂本暁美、坂本示洋 (翻訳) 音楽之友社
という書籍に
以下のような記述があります。
バロック時代と古典派時代の音楽家は、
王と教会を頂点として国家と貴族がそれに続くという、
当時の身分社会での自分たちの立場をよく知っていました。
どのように行動すればよいのか、何が期待されているのかを、
誰もが知っていました。
作曲家は、課せられた制限の枠内で創作し、
当時の聴衆に容認された形式と表現方法で音楽をつくり上げました。
(抜粋終わり)
モーツァルトのピアノソナタの中に
現在のノンクラシックでいうadd9の響きなども出てきますし、
当時の作曲家にとって
そういった響きの感覚がゼロだったわけではないでしょう。
しかし、抜粋からも読み取れるように
当時はいわゆるモラルのようなものが強くありました。
また、使う技法には
思い付く思い付かないの問題ではなく
楽器の進化の都合上、
やりようがなかったものもあります。
例えば、
膝レバーでダンパーを動かす黎明期の装置には
中央あたりから下の音域の音のみを持続させるものがありました。
(低音部や高音部が個別もしくは同時に動くものもありました。)
したがって、
後の時代に作曲された
以下のような譜例の効果は出せない楽器も存在したんです。
ドビュッシー「前奏曲集 第2集 より ピックウィック卿を讃えて」
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲尾)
この締めくくりは
強く響く中音域の和音を
静かに響く低音と高音がエコーのように包みこんで終わります。
ただ、こういった効果は
全音域に対して有効なダンパーペダルあってこそ。
仮にこのようなやり方を
上記、中央あたりから下の音域の音のみしか持続できないペダル時代の作曲家が思い付いても
当時の楽器のためには書きようがありません。
上記の書籍には
以下のようにも書かれています。
ここでは便宜上、後期ロマン派のピアノ曲の作曲家たちのことを、
「ダンパー・ペダルを使って音の織りと音の色彩を描いた画家」
と考えるとよいかもしれません。
(抜粋終わり)
現在広く使われている機能をもったダンパーペダルが現れてからは、
色彩面などでピアノの可能性が
大きく広がりました。
この点で特に
ドビュッシーの中期以降の作品がピアノ音楽の世界へ与えた影響は
非常に大きなものです。
◉ ピアノ・テクニックの基本 ピーター コラッジオ (著)、坂本暁美、坂本示洋 (翻訳) 音楽之友社
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