【ピアノ】一度の打鍵で fp を表現するためには

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ピアノでは、
管楽器や弦楽器のように
出し終わった音を
急激に大きく又は小さくすることは
原則できません。
では、一度の打鍵において fp と書かれている場合は
どうすればいいのでしょうか。

 

一度の打鍵に対して fp と書かれている例は

意外と多く見られますよね。

有名どころだと、

◉ ベートーヴェン「ピアノソナタ第5番 第1楽章」
◉ ベートーヴェン「ピアノソナタ第6番 第1楽章」
◉ ベートーヴェン「ピアノソナタ第8番 第1楽章」

など。

 

結論的には、

「 fp と書かれた意図を推測して、その箇所にとっていちばん適切だと思われる方法を選択する」

このようにすることになります。

 

以下、複数の解釈を学習しましょう。

 

■ 一度の打鍵で fp を表現するためには

♬ 一種の「アクセント表現」と解釈する

 

fp が書かれている一例を挙げます。

 

ベートーヴェン「ピアノソナタ第8番 悲愴 ハ短調 op.13 第1楽章」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

ここでの fp 

複数の解釈ができるでしょう。

そのうちのひとつが、

「一種のアクセント表現と見なす」

というもの。

 

「この音のみが f で、他は p です」

という表現を意図したアクセント。

当たり前のことと思うかもしれません。

しかし、

まずは f とだけ書いておいて

次の音がでてくる箇所に p と書いたのでは、

出てくるサウンド自体はあまり変わらなくても

楽譜から伝わる内容がまったくの別物になってしまうのです。

の打鍵が終わった “直後” から p の世界だと伝えるには

fp と書くべきなのです。

 

♬ 一種の「フェルマータ表現」と解釈する

 

(再掲)

考えられるもう一つの解釈は、

「一種のフェルマータと見なす」

というもの。

 

f で打鍵した後に、余韻が p まで減衰したら次の音へ進んで欲しい」

という表現を意図したフェルマータ。

譜例のように

すぐ次に音がないところでは有効に使える上、

比較的、fp に近い表現が手に入ります。

 

作曲当時のピアノは現代のピアノよりも減衰が速かったので

こういった表現がより効果的であったと言えるでしょう。

 

♬ その他の解釈案

 

(再掲)

その他の解釈の一つとして考えられるのは、

「楽譜上の情報量をシンプルにしたい」

ということでしょう。

fp(フォルテピアノ)」と書いておけば、

その後に「ピアノ(弱く)」と書かなくてもいいので、

楽譜がシンプルになります。

楽譜には「利便性を追求する」という意図もあるために

楽譜上の情報量をシンプルにする必要性もゼロではなく、

その必要性は存命の邦人作曲家も語っています。

 

もう一つだけその他の解釈を挙げるとすると、

「オーケストラを想像していた可能性がある」

ということでしょう。

特に、譜例の楽曲では

ピアノ曲であるにも関わらず、

「オーケストラが聴こえてくる箇所」がたくさんあります。

オーケストラで演奏するとしたら、

fp(フォルテピアノ)」も表現できます。

 

♬ 〔番外編〕制約はあるけれども、本当に fp に聴かせる方法

 

番外編として、

本当に fp のように聴かせる方法をお伝えします。

 

響かせたい音によっては

「倍音」を使用することで表現可能なのです。

例えば、次のような例。

ひし形のA音を、音を鳴らさずに押さえておきます。

そして、16分音符で書いた音を鋭く演奏します。

そうすると、丸印で囲った音がハーモニクスとして響くのです。

ハーモニクスの音は弱音で背景のように響くので、

まるで fp を表現したかのように聴こえなくもありません。

 

もちろんすべての音でできるわけではありませんが、

譜例以外の音を使っても

いく通りかはハーモニクスを表現可能。

倍音について勉強すると

このテクニックを応用することができます。

 


 

今回はいくつもの解釈をご紹介しましたが、

大切なことは

解釈の可能性を何通りも引き出しへ入れておくことです。

そうすることで、

一度の打鍵による fp が出てきたときに

その箇所に応じた最適の解釈を見つけ出すことができるでしょう。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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