ドビュッシー「前奏曲集 第1集 より 沈める寺」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、42-45小節)
ここでは、
p 以下のダイナミクスが
p を含めて「4段階」も指定されています。
più を用いたこのような細かなダイナミクス指示は
ドビュッシーがたびたび用いた記譜で
「前奏曲集 第2集 花火」の曲尾などにも見られます。
現代においては珍しくありませんが、
当時の作品の中にあっては少数の記譜でした。
この譜例の箇所では
4段階のダイナミクスに明確な差をつけることはなかなか困難。
多くの場合は、
最初の p の箇所をやや大きめに始めることで対応します。
ミシェル・ベロフも
TV番組「スーパーピアノレッスン フランス音楽の光彩」の中で、
「mf ぐらいから始めるように」
と指導していました。
これも一案なのかもしれませんが、
筆者は、せめて「mp 」から始めるのをおすすめします。
というのも、
「音量」だけの視点ではなく
「テンション(緊張感)」の問題もあるため、
(もっと言えば、「音色」や「遠近感」の問題ありますね。)
mf だと p の世界観と大きな差があるから。
ドビュッシーが何故わざわざ p を用いたのかを考えると、
mp ぐらいから始めたほうが
作曲意図に近いと言えるでしょう。
この「テンション(緊張感)」の問題を理解するためには
「オーディオ」を思い出すのがいいでしょう。
f や mf などで演奏されている箇所を
どんなにボリュームを下げて聴いても
音量が下がるだけで
結局は f や mf の世界に聴こえます。
その逆も同様。
つまり、
「テンション(緊張感)」などの
音量以外の要素にも視点を向けないと
作曲家の意図を取り違えることになりかねません。
「音の大きい小さいだけで音楽をコントロールすることはできない」
ということです。
(再掲)
mp からでしたら
なんとか4段階下げていけるでしょう。
「 mp 」→「 p 」→「 pp 」→「 pp + ソフトペダル 」
このようにすれば、
ドビュッシーの意図を大きくは外れずに
演奏も可能な解釈になります。
要点をまとめます。
◉ だからこそ、作曲家が書いたダイナミクス指示を勝手に変更するのがマズイ
◉ ドビュッシーなどの作曲家は、当時としては珍しく、弱音の中に多彩な幅を要求する記譜を遺した
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