クラシック音楽では
楽譜に書かれていることは変えないのが原則。
一方、
あえて変えて弾くことも
ゼロというわけではありません。
例えば、
書かれているよりも
もっと深く響くバスの響きがほしいときに
オクターブ下のバスを追加する例は
割と見受けられます。
クリスチャン・ツィメルマンは
の演奏で
下方にオクターブバスを追加して録音しています。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、69-71小節)
( )で示した音が追加された音。
ここは前半部分のヤマであり
バスをしっかりと響かせたかったのでしょう。
作曲当時の楽器の音域が足りなくて
書かなかったわけではありません。
この作品を作曲したときにショパンが使っていたピアノでも
譜例の( )で示した低いFes音は
出すことができたとされています。
この解釈は
作曲家の意図を無視したことになるのかと言えば、
奏者の解釈として許される範囲だと考えます。
音楽の内容を大きく変えたというよりは、
ショパンが書いたエネルギーの方向性を強めたに
過ぎないからです。
もう一例を見てみましょう。
「ピアノペダルの使い方」(笈田光吉 著 音楽之友社)
という書籍にヒントがあります。
譜例(PD作品、Finaleで作成、106-109小節)
(以下、抜粋)
この例で知らなければならないことは、
バスのesの音をできるだけ強く最上の効果を欲するならば、
左手の下に音をつけてオクターヴとし、
右手は左手の上のオクターヴの音を一つ、
合計両手で三つのes音を弾くのがよいということである。
一般にバスの音すなわち根音、あるいは和音が強ければ強い程、
その上に、ペダルを踏み代えずに、沢山の音を弾くことができる。
(抜粋終わり)
譜例の( )で示したふたつが
上記で追加されてもよいと言われている音。
このように
3音の2オクターブでバス音を弾くやり方は
数名の作曲家が
追加ではなく ”書き譜として” 取り入れています。
非常に太く深い音がするので、
弾いている楽曲において
求める表現に必要だと思ったら
上記譜例のように追加してみるのもアリでしょう。
ただし、
無闇に変更してしまうのではなく
「こういう意図で変更した」
としっかりと言葉にできるくらいの理由とともに
変更してください。
◉ ピアノペダルの使い方(笈田光吉 著 音楽之友社)
【ピアノ】音を変えてはいけないのは原則であり、絶対ではない
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