【ピアノ】思い込みに引っ張られない譜読みを心がける

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「まっさらイチから読む」
という譜読みは
自分の人生で
一曲につき、一回限り。
この段階に力を入れて集中するのも悪くないでしょう。

 

ある新しい楽曲へ取り組むことになったとき、

譜読みをする前に

ピアニストによる録音演奏を聴くことはあると思います。

これについては

良くないとする意見もありますが、

筆者としては

「まず楽曲を好きになるのが出発点で、弾いてさらに好きになれれば」

くらいで考えているので

必ずしも良くないとは考えていません。

 

一方、ちょっとした注意点があります。

「録音に引っ張られて幻覚を見ないように注意すべき」

ということ。

 

例えば、モーツァルト「ピアノソナタ第14番 K.457 第2楽章」

この楽曲の場合、

多くの方はヘンレ版などの原典版を使って取り組むと思います。

ところが、

カール・エンゲルなどの演奏を聴いていると

ヘンレ版に書かれているタイをやっていなかったり

書かれていない付点を加えて演奏しているところが

確認できます。

 

こういった録音が頭と耳にこびりついていると

初めて譜読みをするときに

幻覚を見るかのように

書かれているタイが見えなかったり

書かれていない付点が見えてしまったりする。

録音で聴いていた内容へと勝手に変換して

そのように見えてしまう。

 

音楽内容の正しいほうを決めたいわけではなく、

注意喚起が目的です。

 

似た例をもうひとつ挙げましょう。

「17時に待ち合わせ」
というメッセージがきていたとしても、
近々15時関係の用事に囲まれて生活していたり、
17時の「5時」というのを
15時だと思い込んだりなどといったように、
頭が勝手に読みかえてしまう。
そういうものだと思って当日を迎えてしまう。

みたいなことって、

ときどき自分や周りで起きていますね。

上記のピアニストによる演奏の話もそうですが、

頭や耳にこびりついた情報というのは

ときに、思い込みを呼んでしまう。

 

繰り返しますが、

譜読み前に録音を聴いてはいけないわけではありません。

譜読みのときには

まったく知らない楽曲を読むときと同じくらい

目を光らせて下さい。

 

聴き覚えている「こんな感じ」を優先して

浅く読んでしまうと

楽譜を読み違える可能性があります。

 

まず、自身が使っている版で正確な譜読みをする。

そして、その後に必要であれば変更も含めた解釈を付け加える。

この順番を守って学習しましょう。

 

おおむね弾けるようになって

弾き込みの時期へ入ってからも、

その楽曲に取り組み続けている限りは

何かしらの発見があります。

ある意味、一生譜読みをしていくわけですね。

しかし、

「まっさらイチから読む」

という譜読みは

自分の人生で一曲につき、一回限り。

この段階に力を入れて集中するのも悪くないでしょう。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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