「押し引き」と言うと
アゴーギクのことをイメージするかもしれません。
ある意味、それも大事な押し引きなのですが、
今回話題にしたいのは、
「表現的に攻めるかどうか」
という意味での押し引きです。
押してばかりでも引いてばかりでも
聴くほうは疲れてしまいます。
筆者は昔、「押し引きが大事だ」と言われ続けました。
作曲のレッスンで言われたことですが
もちろん、演奏においても大切な考え方。
「押し」についてはイメージがつくと思いますので
「引き」について解説します。
例えば「通り過ぎる」と言う表現。
「この小節は、ただ通り過ぎるだけにして」
などという指導を耳にしたこともあるのではないでしょうか。
重箱の隅を突くように細かい表現を試みることは
必要なのですが、
作曲家はただのつなぎのようなところもたくさん作っていますので
(例:ソナタ形式における、一部の経過句など)
そういったところでは
むしろサラッと次へ行ってしまったほうが
音楽として魅力的になることも。
こういったやり方は、一種の「引き」。
「表現を必要以上につくりすぎない」ということ。
「引き」について
もうひとつ挙げておきましょう。
「息抜きのタイミングを与える」
というのもそのひとつです。
例えば、
ショパン「エチュード Op.10-1」では
基本的に全編にダンパーペダルが使われますが、
わずかの小節では
ノンペダルでパラパラっとしたサウンドを
聴かせる解釈もあります。
ペダルでベッタリと和音化されているサウンドから解放されて
聴衆へちょっとした息抜きを与えることになります。
こういうやり方も「引き」の一種だと考えてください。
「押し」も「引き」も
楽曲の数だけやり方があるので挙げればキリがありませんし
やり方に正解もありません。
表現の仕方まで含めて
演奏者のセンスが問われてきます。
こういったことまで踏まえるのは
結構高度な考え方ですが、
作品をより高度に仕上げていくうえでは欠かせませんので
是非意識して欲しいと思います。
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