具体例を挙げます。
バルトーク「ミクロコスモス第5巻(122~139)125番 舟遊び」
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
このように、
それぞれの段に別々のダイナミクス記号が書かれている例は
それほど珍しくもありません。
この作品の場合、
バルトークはなぜこういった記譜をしたのでしょうか。
まず、真っ先に考えられる理由としては
「単純に、ダイナミクスの弾き分けの要求」
というものがあります。
楽譜を見て分かる通り、
下段は p で、上段は mf で弾いてほしいということが
一目で伝わってくるという利点がありますね。
例えば、
通常のように
大譜表の真ん中あたりに p とだけ書かれていたとしても
メインのメロディである上の段の音は
mf か mp などのやや骨太の音で弾くことでしょう。
しかし、
分けて書かれたことで
演奏者へ任せすぎるのではなく
作曲家によるダイナミクスの弾き分けの要求が
もっとはっきりと伝わってきます。
正直、どちらでも成立しますが
ダイナミクス記号の記譜については
作曲家がその箇所へ与えたいイメージによって
比較的自由な形態で書かれるのです。
以下、同じ譜例を使って
作曲家の意志がもっと色濃く出た理由についても
解説しておきましょう。
(再掲)
作曲家が
それぞれの段に別々のダイナミクス記号が書くのは
「別々の要素だということを強調したいから」
というケースも考えられます。
前項とも似たようなことですが、
この譜例では
こちらの意図がより強いように感じます。
「舟遊び」というタイトルから
右手の動きが「舟」
左手の淡々とした動きが「流れゆく川」
と考えると、
「それぞれが別の要素ですよ」
という意図をもって
別々のダイナミクス記号を書いたのではないか、
このようにも解釈できます。
この他、
2声などによるポリフォニック作品では
それぞれのパートが「独立した線」なので
別々にダイナミクス記号がつけられていると
理解がしやすくなります。
例えば、以下のような例。
バルトーク「ミクロコスモス第3巻(67~96)91番 インヴェンション(1)」
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
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