具体例を見てみましょう。
楽曲が変わっても考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、37-40小節)
左手パートを見てください。
音符の下側へ書き込んだのが
ヘンレ版をはじめ、多くの版で採用されている運指です。
しかし、この運指では
各小節の1拍目ウラへ移るときと、小節をまたぐときとで
ポジション変化を伴う跳躍を2回もしないといけません。
一方、
音符の上側へ書き込んだ運指を使うと
跳躍をしなければいけないのは
小節をまたぐときのみになるので、
2回跳躍をしないといけない運指を使った場合に比べると
「弾きやすさ」という意味では
圧倒的にやりやすいものとなります。
特に、
この楽章のように急速なテンポを求められている場合には
跳躍というのは
テクニック的に問題が起きやすいので
それが少ない運指を使うほうがいいでしょう。
(再掲)
ではなぜ、
多くの版では下側の運指を採用しているのでしょうか。
おそらく、アーティキュレーションの面を考慮しているからだと考えられます。
ここでの左手パートに
モーツァルトはアーティキュレーションを書き込んでいませんが
各小節の4つの8分音符を「1+3」のようにとることができ、
下側の運指を使うと
勝手にそのアーティキュレーションが出てきてくれる。
「1+3」の1というのはバス音、
3というのは
曲頭からの左手パートのリズムからきています。
一方、上側の運指を使っても
アーティキュレーションを表現することはできるので、
跳躍の回数から考えても
こちらの運指を使うほうがいいでしょう。
本記事でいちばん言いたいのは、
「運指の違いによる跳躍回数の違いに目を向けるべき」
ということ。
書かれている運指を鵜呑みにして使っていると
よりよい案に気が付かないこともあります。
弾きにくいと感じる部分があったら
必ず、運指の検討余地がないかを考えてみるようにしましょう。
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