同じようなひとかたまりを並べて演奏するときに、
たとえ作曲家がダイナミクスを書いていなくても
2回目は落としてエコーのように演奏するのを
耳にしたことがあるはず。
実際の作品には
エコー表現に出来そうなところというのはたくさん出てきます。
例えば、以下のような例。
J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第6番 BWV 851 ニ短調 より プレリュード」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、 16-17小節)
カギマークで示した部分は
直前の繰り返しであり、
エコーと捉えることもできなくはありません。
もう一例を見てみましょう。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第30番 ホ長調 op.109 第2楽章」
譜例(PD作品、Finaleで作成、51-54小節)
この例では
ベートーヴェン自身がダイナミクス指示を残しています。
音域の変化も考慮すると
エコーを想定していたと考えていいでしょう。
これらのようなエコー表現を見つけたときに考えるべきなのは、
「ほんとうにエコーにすべきなのか」ということ。
ベートーヴェンの譜例のように
作曲家がダイナミクスまで指示してエコーにしている場合は
とうぜん表現して構わないのですが、
そうでない場合に
やたら何でもかんでもエコーにしてしまう演奏が
多いように感じます。
エコー表現というのは一種の「効果」であり、
控えめに用いられるからこそ
魅力的に聴こえるわけです。
1曲の中でエコーばかりでは
「またか感」が出てしまい
それがテーマとして作曲された作品でない限り
むしろ退屈する演奏になってしまう。
f や ff だって、
ときどきくるからこそ
そこに迫力をつくるのであって、
ずっと鳴りっぱなしで
聴衆の耳が慣れてしまったら
迫力でも何でもなくなってしまいますよね。
エコー表現など何か特別な表現を解釈上加えるのであれば
それが楽曲全体の中でどうバランスするのかを
考えるようにしてください。
そして、控えめに用いるようにしてください。
上記、J.S.バッハの譜例も
譜例のところのみをエコーにするのであれば
いちおう問題はありませんが
「原則、しなくてもいいかなと少しでも思ったら、しない方向でいく」
くらいで考えていていいでしょう。
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