以下の譜例を見てください。
モーツァルト「ピアノソナタ ト長調 K.283 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、45-50小節)
大譜表の下へカッコで示して書き込んだダイナミクスは
モーツァルト自身によるダイナミクス指示であり、
大譜表の中へ書き込んだダイナミクス指示は
「モーツァルト ピアノ・ソナタ演奏と解釈」 著 : 山崎 孝 / 音楽之友社
という書籍の中で提案されているダイナミクス指示。
上記書籍の中で提案されているダイナミクス指示は
「小節構成を活かしたダイナミクス処理」
となっており、
この考え方は応用の利く重要なものなので
少し掘り下げていきます。
(再掲)
まずは、
「小節構成を活かしたダイナミクス処理」
とはどういうことかについて。
譜例のところは
「A(2小節)+B(1小節)」
その繰り返しで「A’(2小節)+B’(1小節)」
という小節構造となっており、
それにフィットさせるかのように
p → mf → mp → f とチェンジさせていますね。
ダイナミクスチェンジ箇所の決定に
小節構成を活かしていることが
分かると思います。
(再掲)
もう少し細かく見てみましょう。
Aの部分はヘミオラになっています。
ヘミオラとは、
「3拍子系の曲で、2つの小節を3分割するリズムのとり方」
ごく簡潔に言うと、このようになります。
(「2つの奇数拍子の小節を1つにする」という広義での解釈もあります。)
つまり、
ヘミオラで構成された2小節がひとかたまりで
それに、1小節ぶんのまとめ的な小節として
Bが挿入されているわけです。
(再掲)
BはAと比べて
言い切るようなキメにも感じられる音遣いになっているため
ここでダイナミクスを上げているのは
理にかなっていますね。
A’ B’ は、A B を変奏させている繰り返しなので
基本的な考え方は同様。
ただ、どちらも1段階ずつダイナミクスを上げて
変化がつけられています。
譜例のところのように
単純な「2+2」などではなく
少し変わった小節構成をしているところというのは、
必ず、譜読みのときに整理して
どのような構成になっているのかを見抜いておいてください。
そうすることで
本記事で取り上げたような
「小節構成を解釈に活かす」
という選択肢も候補へ入れることができるようになります。
◉ モーツァルト ピアノ・ソナタ演奏と解釈 著 : 山崎 孝 / 音楽之友社
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