以下の譜例を見てください。
ブラームス「6つの小品 ロマンス Op.118-5 ヘ長調」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
ここでは
黄色マーカーで示した下降ラインのメロディが重要ですが、
それと同じくらい
黄緑マーカーで示した内声のメロディも重要です。
よく見ると、
黄色のメロディの発音打点では
必ず黄緑のメロディも発音していますね。
(再掲)
ピアノという楽器は
その楽器の特性として音が減衰することもあり、
このように同時発音される場合は
よほど内声を際立たせない限り
音域が上にあるトップノートばかり聴こえてしまう傾向にあります。
ただし、ここではブラームスによる書法の工夫がされていて
内声で演奏される黄緑のメロディは
オクターヴユニゾンで補強されています。
したがって、
通常の感覚で弾くだけで
黄色、黄緑のそれぞれのメロディが
どちらも聴こえてくるんです。
「ピアノという楽器の特性をカヴァーするための内声オクターヴ奏法がとられた例」
と言えるでしょう。
内声の ”主役の” メロディがオクターヴユニゾンで演奏される例は
他の作品でもたくさんありますが、
上記の例のように
ふたつのメロディをどちらも大切な要素として扱ったうえで
それらのバランスをとることにオクターヴユニゾンが活きている例は
意外と少ない印象です。
もしかしたら、
ブラームスはそこまで考えずに
「内声のメロディはオクターヴユニゾンの響きで欲しい」
と思っただけなのかもしれませんが。
本記事で取り上げたような内容を
学んだり考えたりすることで
楽曲理解を深めると同時に
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