具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第1番 Op.2-1 第1楽章」
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
この大楽節の8小節間におけるクライマックスは
もちろん、7小節目。
聴いたり弾いたりしてみると、
7小節目へ向けて
アッチェレランドしているわけではないのに
どことなく切迫していっているように感じますね。
その理由は
◉ 和声的リズムの変化
この2点にあります。
メロディ素材の縮節
(再掲)
実線カギマークで示しように、
はじめは2小節単位でのメロディですが
5小節目からは1小節単位に縮まり
7小節目でさらに縮まって、頂点を形成。
5-6小節目に書かれている sf は
まるで1小節ごとになったことを示すかのようですね。
このように
「提示された素材が、音価や拍の長さを縮めながら連結されていくこと」
を「縮節」といい、
非常に良く使われる手法となっています。
縮節されることにより
テンポこそ変わらなくても
切迫感が演出されています。
それも、5-6小節目では
最初に提示された2小節単位の動機(1小節単位の部分動機が、ふたつ組み合わされたもの)のうち
3連符という細かい音符が含まれる部分動機のほうを
繰り返しているので、
なおさら、せきこみ感が出ていると言えるでしょう。
和声的リズムの変化
切迫感を感じる理由のもうひとつに
「和声的リズムの変化」があります。
(再掲)
今度は、点線カギマークのほうを見てください。
はじめは2小節1和音で進行しますが、
5小節目からは1小節1和音になり、
クライマックスの7小節目では
ついに1小節2和音になります。
上記のメロディ素材の縮節と同じように、
和声的リズムがだんだんと細かくなっています。
「和声(ハーモニー)が変わるのもリズム表現の一種」なので
切迫感を感じさせる要因のひとつということ。
上記の2種の表現方法は
細かなことのようですが、
「アッチェレランドをしていなくても、音楽を前へ進める要因をつくっている」
という意味では
非常に重要なものだと言えるでしょう。
Amazon著者ページ
https://www.amazon.co.jp/~/e/B0CCSDF4GV
X(Twitter)
https://twitter.com/notekind_piano
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCBeXKaDXKd3_oIdvlUi9Czg
筆者が執筆しているピアノ関連書籍に加え、
数多くの電子書籍が読み放題になるサービスです。
コメント