【ピアノ】完全段落から読み解く楽曲の構造

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【ピアノ】完全段落から読み解く楽曲の構造

► はじめに

 

文章を読むとき、我々は句読点で文の区切りを理解します。

音楽にも同じように「区切り」があり、その中でも重要な役割を果たすのが「完全段落」。

今回は、この完全段落を理解することで、楽曲の構造をより深く読み解いていく方法をご紹介します。

 

► 本記事の対象者と前提知識

 

こんな方におすすめ
・楽曲の構造を理解したい方
・作曲者の意図を読み解きたい方
・音楽理論の実践的な応用に興味がある方

必要な前提知識
・基本的な楽譜が読める程度
・和音記号(Ⅰ、Ⅴなど)の基礎的な理解

 

► 完全段落の基礎理論

 

‣ 完全段落とは

 

完全段落というのはあまり使われない言葉ですが、

分析本では目にすることがあります。

意味としては、文字通り、完全に段落感をつける部分のこと。

音楽における「ピリオド」のような役割を果たします。

文章でいえば、一つの話題が完結する場所。

音楽では、一つのまとまった音楽的な考えが完結する場所を指します。

 

‣ 完全段落の重要性

 

完全段落を理解することで、以下のような音楽的な洞察が得られます:

・楽曲のエネルギーの流れ
・フレーズのまとまり
・演奏表現の可能性

 

► 実例分析

 

‣ 基本的な完全段落

 

モーツァルト「ピアノソナタ K.545 第1楽章」

譜例(PD作品、Finaleで作成、27-29小節)

 

28小節目に見られる完全段落は、ソナタ形式における提示部の締めくくりとして機能しています。この部分では:

・メロディが主音に到達
・伴奏が明確に終止
・テンポやダイナミクスで区切りを表現可能

 

試してみよう:

この部分を弾いてみて、どのように「終わった感」を表現できるか考えてみましょう。

 

‣ 典型的な完全段落

 

モーツァルト「ピアノソナタ第11番 K.331(トルコ行進曲付き) 第3楽章」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、22-26小節)

26小節目の完全段落は:

・明確な終止感
・フレーズの完結
・次のセクションへの準備

 

‣ 完全段落とみなさない例

 

モーツァルト「ピアノソナタ第8番 K.310 第3楽章」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、19-24小節)

この例では、Ⅰの和音とメロディの主音が一致していても完全段落とみなしません:

・メロディの主音が短い
・次のフレーズへの流れが途切れない
・終止感が弱い

 

全終止というのは、和声の句読点としてピリオドのニュアンスを持つ時だけが該当するので、

この例のように、Ⅰの和音、そしてメロディが主音に来ていても、該当しないケースもあります。

全終止と完全段落は同様と考えてOKですが、完全段落は、言葉の通り、段落感へ目をつけた分類です。

 

► 実際にやってみよう

 

ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1) 第1楽章」を例に、完全段落を見つける練習をしてみましょう。

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

分析の手順

1. まず楽曲の構成を確認する

・A(1-8小節)
・B(9-16小節)
・A(17-24小節)
・コーダ(25-34小節)

2. 各セクションの終わりを観察する

・メロディの動き
・和声進行
・音楽的な終止感

 

考えてみよう:

解答を見る前に、楽譜を見ながら完全段落だと思う箇所にマークをつけてみましょう。

特に以下の点に注目して:

・フレーズの終わり方
・和声の動き
・音楽の流れ

 

 

【解答と解説】

・A(1-8小節)→ このセクションの終わりは、完全段落
・B(9-16小節)→ このセクションの終わりは、完全段落ではない
・A(17-24小節)→ このセクションの終わりは、完全段落
・コーダ(25-34小節)→ このセクションの終わりは、完全段落

 

16小節目は全終止でなく、スムーズにAの再現を導く音遣いになっており、

聴覚的にも全く段落感はありませんね。

 

► 終わりに

 

完全段落を理解することは、楽曲の構造を把握する第一歩です。この知識は:

・フレージングの工夫
・強弱やテンポの選択
・楽曲全体の解釈

など、音楽表現の様々な場面で活かすことができます。

 


 

【おすすめ参考文献】

楽曲分析をより深く学びたい方へ:

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・本記事の内容をさらに深く掘り下げた実践的な分析例を紹介
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「楽式論」 著:石桁真礼生 音楽之友社
「作曲の基礎技法」 著:シェーンベルク 音楽之友社

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